クラウド・サービスの市場規模は、2010年の実績で、SaaS、PaaS、IaaS合計で前年比45%増の454億円という結果になったそうです。また、2015年には、2000億円程度と予測されており、その高い成長率には、目を見張るものがあります。
ただ、この数字を冷静に眺めてみると、確かに大きな金額ではありますが、日本の情報サービス産業の市場規模が、11兆9141億円であることを考えてみると、わずか0.4%に過ぎないという事実も見えてきます。
これだけ、世の中がクラウド、クラウドと騒ぎながらも、その現実は、まだまだ、これからというのが、どうも実態のようです。
事実、SI事業者やソリューション・ベンダーは、「もはやクラウド以外に選択肢はない」と言わんばかりに、喧伝する一方で、お客さまは、必ずしもその勢いには、乗り切れていない。つまり、売上げにつながっていない・・・そんなギャップを感じている営業の方も多いのではないでしょうか。
また、このような現実に、「クラウドとは言うけれども、いったい自分たちは、何を売ればいいんだろう」と頭を悩ましている営業も、少なくないように思います。
なぜ、こんなギャップが生まれているのでしょうか。私は、そこに「クラウド・レディの壁」が、大きく立ちふさがっているのではないかと考えています。
上記、統計を改めて冷静に見るとコミュニケーションやコラボレーションなどのSaaSが、市場を大きく牽引していることが見て取れます。これは、業種業態にかかわらず、企業個別の独自性はあまりなく、かつ、ミッションクリティカルではない非基幹業務です。
そもそも、この分野の市場規模は、ITビジネス全体を見てもそれほど大きなものではなく、ここに頼っていてる限りでは、クラウド市場の大きな拡大は期待できません。そうなると、基幹業務のクラウド化に期待したいところですが、現実はどうもそうではないようです。基幹業務となると、これを積極的にクラウド、特にパブリック・クラウドに移行しようという動きは、なかなか聞こえてきません。
その理由として、よくあげられるのは、セキュリティやコンプライアンスの問題、そして、レイテンシ(遅延時間)の問題です。しかし、これらは、どれもクラウド・サービス事業者の問題なわけですが、私は、それ以上に、ユーザー企業側の問題が、大きく立ちふさがっていするように思うのです。それが「クラウド・レディの壁」です。
クラウドの特徴として、「仮想化」、「運用の自動化」、「サービス化」の3つのがあげられます。
「仮想化」とは、言うまでもなく、部門や拠点、あるいは、アプリケーションや機能毎にバラバラに配置された物理マシンを仮想化によって集約することを意味しています。
しかし、いくら仮想化の技術を使い物理マシンを集約しても、運用に関わる手間が少なくなるわけではありません。むしろ、物理マシンと仮想マシンの混在、簡単に仮想マシンを構築できることによる仮想マシンのスプロール現象などを考えると、むしろ運用は複雑化し、技術的にも高度化することは避けられません。この問題に対処できなければ、仮想化のメリットを引き出すことはできません。だから、「運用の自動化」は、大切な要件となります。
さらに、集約されたシステム・リソースをいちいち人手を介して割り当て、提供してゆくようでは、運用の手間は、むしろ増加します。仮想マシンの割り当てや消去、あるいは、課金などの一連の手順をワークフローとして定義し、サービスとして自動化する取り組みが合わせて必要になるでしょう。
これは、インフラやプラットフォームばかりではなく、アプリケーションにもあてはまることであり、このような仕組ができて、TCOの削減や変更、変化への迅速な対応も可能になるわけです。
このようなクラウドを基幹業務で利用するためには、現状のシステムの利用状況を調査し、適切な計画を立てる必要があります。その上で、まずは、各拠点に散らばる物理マシンを一カ所に集め、それをブレード・サーバーなどに集約する。さらには、異なる運用の実態を整理し、いくつかのパターンに対応した運用グループ毎に標準化をはかる・・・などの様々な準備作業が、必要になるでしょう。そのような手間を経て、初めて、物理マシンを仮想マシンへ集約するという最初のステップをクリアすることができるわけです。
このような事前準備を考えなくていいのが、開発やテスト環境のクラウド化です。セキュリティやコンプライアンスに対する配慮も基幹業務ほどではありませんから、一足飛びにクラウド化も可能です。意外とこの需要は大きいようです。例えば、大手の金融機関などは、開発、テストのためのサーバーが、全所有サーバーの6割から7割を占めているそうで、その中には、資産上残っているだけというものもあるそうです。当然、稼働率も低く、従量課金のIaaSやPaaSを利用すれば、大幅なスペースの削減やTCOの削減が期待できるはずです。
しかし、基幹業務となると、今現実にそれを動かしているわけですし、業務によって様々な使われ方をしています。その現状を洗い出し、整理し、計画を立て、標準化するというのは、なかなか大変なことです。しかし、この作業をすすめてこそ、初めて「クラウド・レディ」になるわけです。
一旦、クラウド・レディの状態にすれば、それをプライベートやパブリックで運用する。あるいは、それを組あせてハイブリッド・クラウドとして運用するという選択肢を選ぶことができます。
クラウド市場の拡大は、基幹業務のクラウド化が、大きな鍵を握っています。これは、お客さまにとっても、TCOの削減や変更、変化への柔軟かつ迅速な対応を実現するために、大変有効な手段になり得ると思います。しかし、まずは、クラウド・レディの状態を作らない限り、次のクラウドに進めないのも事実です。
改めて、クラウドをビジネスとして考えるとき、一足飛びにクラウドを売り込むのではなく、クラウド・レディのお手伝いするというアプローチがあるのではないでしょうか。
これには、そこそこの時間がかかるはずです。その間に、パブリック・クラウド・サービスの多くの課題は解消され、様々な解決策も出てくるはずです。そういう時代が来たときにすぐに対応できる準備、つまり、クラウド・レディへの取り組みこそ、私たちは、今、積極的に提案してゆくべきではないでしょうか。
> Facebookページに「これ一枚で分かるクラウド・レディ」を掲載しました。
既にご存じの皆さんも多いことと存じますが、上記会議を開催します。
営業活動にに関わる全ての皆さんが対象です。企業の大小にかかわらず、ベンダー、メーカー、SI事業者にかかわらず、IT営業の第一線に関わる皆さんが、対象です。もちろん、営業職の皆さんだけではなく、エンジニアもマーケターも経営者も、営業活動に関わる皆さんです。
こんなことを申し上げれば、不謹慎のそしりを受けるかもしれませんが、営業の現場にいるものとして、この震災が、自分たちのビジネスにどのような影響を与えるのかを、是非知っておきたいと考えている人は多いはずです。そして、どうすれば、この震災を乗り越え、あるいは、これを切っ掛けとして、ビジネスを伸ばしてゆくかを模索されているのではないでしょうか。
無償の貢献、ボランティア活動・・・私たちは、可能な限り、できることを行なうべきです。しかし、それだけでは、いずれ支援を続ける側が、体力を無くしてしまいます。これでは、将来の復興もあり得ません。
そんな現実的な視点に立ち、営業としてできること、営業としてやるべきことを、この業界に関わる多くの人とともに議論しようという企画です。
発起人をご覧いただければ分かるとおり、会社の垣根を越えて、大小を問わず、多くのITソリューション・ベンダーの皆さんが、ボランティアで名前を連ねていだきました。また、IT系のメディア各社もご協力いただくこととなりました。
いかがでしょう。皆さんも参加されませんか。私たちにできること、やるべきことを、一緒に考えてみませんか?
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2011年5月9日(月)18:00-20:30
新日鉄ソリューションズ会議室/東京・新川
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