2010年11月27日土曜日

邪魔な上司にならないための3箇条

 「ああ、めんどくさい。課長に説明すると、また余計なことを言われそうで、めんどうだよなぁ。」

 あなたは、部下に、そんなことをささやかれてはいませんか。

 部下を持ったからと云って、その瞬間にあなたの能力が、一気に向上するわけではありません。「プレーイング・マネージャーとして、頼むよ」を期待され、よぉーしと気合いを入れて、意気込むのは良いのですが、今までの仕事が、大きく変わることはなく、「マネージメント」という仕事が、追加されるに過ぎないのです。

 昇進は、評価されていることの証です。それはそれで、うれしいことですが、「マネージメント」という仕事への期待に応えなくてはなりません。

 プレーヤーとして、優秀であったあなたが、昇進するのはだれの目から見ても、当然です。だから、それを周りも受け入れ、頑張れと励まし、期待を寄せてくれるはずです。では、どうすれば期待に応えられるのでしょうか?

 自分のやってきたことは、自分でわかっています。どうすれば、お客様の課題に迫ることができるのか、どうすれば、お客様と親しく会話できるのか、どうすれば、お客様を説得できるのか・・・あなたは、それを体で知っています。そんなあなたから部下を見ると、なんて要領が悪いんだと思うでしょう。そして、「何でそんなことが、できないんだ!」と自分を基準に部下を評価してしまう。そんなことはありませんか?

 部下の成長は、チームの実績に直結しています。だからこそ、彼らがパワーアップしてほしいと思っています。しかし、ついつい、「こうしなきゃだめじゃないか!」、「とにかく、俺の云うとおりにやっておいてくれ!」、「なんで、何回云っても分からないんだ。」と嘆きや怒りをぶちまけて、部下を萎縮させてはいませんか。

 優秀だからあなたはマネージメントを任されている。未熟だからあなたの部下なのです。そんな当たり前を忘れてしまい、優秀な自分を基準にして、部下を評価しませんか。優秀な自分を基準に、部下の至らなさを減点し、だからだめなんだと評価してはいないでしょうか。部下には部下の精一杯があります。そんな彼が、自分の精一杯を発揮し、新しいことができたとすれば、それを評価する。そんな加点型で部下を見ることはできないでしょうか。

 あなたには、成功体験があります。それは、あなた自身の体が感覚的に知っていることです。しかし、なぜ自分は成功したのかを分析的にとらえ、それを手順として整理し、わかりやすく説明できますか。その努力を怠り、「もういい、こうすればいいんだ。この通りやっておけば、絶対うまくいく。とにかく、俺の云うとおりにやりなさい!」と逃げてはいないでしょうか。

 人は、教えられたら学ばないものです。やれと云われれば、やりたくないものです。それは、あなたもご存じのはずですよね。でも、そうしちゃったほうが、余計なことを考えなくて良いから、楽ちんですよね。あなたは、そんな手抜きの達人なのですか。

 マネージメントの役割は、たった3つだけです。

 まずは、部下のモチベーションを維持すること。いま本人がやっていることの目的や価値を理解させること。それが、本人の成長にどれだけ意味があるかに気づかせることです。そして、進んでやろうとする気持ちを引き出します。そうすると、部下は、その仕事を楽しめるようになります。
 
 箸の上げ下げまで細かく指示することは、「あなたがいうことは正しいとは思います。でも、私には私のやり方があるんですよ。」という反発をいだかせるだけです。
 多少の失敗も本人の勉強です。そう思って、目的と期待する結果を示し、後は任せてみてはどうですか。きっと、本人は意気に感じて、自分で工夫する。思わぬ力を発揮するかもしれません。それを評価してあげましょう。その潜在力を引き出すことこそが、マネージメントの最大の役割ではないかと思うのです。

 次に必要なことは、通訳者としての役割です。経営者の方針、会社の施策をわかりやすく現場に意訳して、説明してあげる仕事です。図解するのもひとつの方法かもしれません。経営者の言葉や会社の施策は、その背景や歴史、社会の動きが分かっていないと、その言葉だけでは、本意をつかみにくいものです。それをわかりやすく解説し、現場の意識や理解に、同じベクトルを与えることは、マネージメントの大切な役割と言えるでしょう。それができなければ、組織はバラバラになり、組織全体のエネルギーを同じ方向に向かわせ、最大の力を発揮することができません。その通訳の役割をマネージャーは担っているのです。

 最後は、今の方向とは反対向きの通訳としての役割です。現場の状況やニーズ、お客様の反応や意向を、あなたの上司や経営者に伝えることです。現場に足繁く通う経営者であっても、日常のオペレーションで、現場に接しているわけではありません。また、財務や経営に関わる様々な重責を担う経営者は、現場へ目を向ける機会をなかなか持てずにいるはずです。だからこそ、彼らに理解できる言葉で、簡潔明瞭に本質を伝えることで、現場に近い感性を与え続けることも、マネージメントの役割と言えるでしょう。結果は、お客様の満足度を高めることになり、自分たちも仕事がしやすくなるはずです。

 「そんなことをおっしゃいますが、日々雑務に追われ、余裕なんてありません。プレーイング・マネージャーとして、お客様も担当しているし、簡単じゃありませんよ。」と本音が聞こえてくるようです。

 そうなんです。「プレーイング・マネージャーという言訳」には、なかなか説得力があります。経営者にしてみても、優秀な営業をお客様から引きはがすには、リスクがあると云うことで、かっこいいカタカナ言葉で、その気にさせているわけですから、そうじゃないとは、云いにくいものです。

 残念ながら、これについての正解はありません。あなたが、今の自分をどう位置づけ、何を重要と考えて優先順位をつけるかは、ご自身で判断してください。

 ただ、これだけは覚えておいてください。本来マネージャーは、部下と対立する関係にあってはいけない存在です。先に述べました3つの役割も、マネージャーは、部下のサポーターであり、スポンサーとして、彼らの自発性と潜在力を引き出す役割を担っています。しかし、プレーイング・マネージャーの不幸は、自分も部下と同じプレーヤーであり、競争し、対立する存在であるという事実です。この相反するふたつの役割をあなたが担っていると云うことです。

 これを整理できないまま、ふたつの立場を混在させたまま、マネージャーの役割を果たすことはできません。部下から見ると、それは「ぶれている」とも見えるでしょう。プレーイング・マネージャーをやめてしまえ!などと云うことは許されないでしょう。だから、今自分は、どちらの立場にいるのかを意識し、その時々の役割に準ずるしかないように思います。

 これができないと、部下は、あなたを邪魔な存在と見なしてしまうでしょう。なんと言っても、自分のライバルですからね。そんな相手が自分の上司なんて、納得できないのは当然のことです。自分の仕事の邪魔をしないでください、成長の邪魔をしないでくださいと・・・

 邪魔な上司にならないためには、今あなたができることは、自分の役割を正しく理解することです。そして、その自覚を持って、ひとつひとつの場面をこなしてゆくことかもしれません。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

http://kandoumeigen.seesaa.net/article/35554973.html
というケースもある様ですが...。最近の若者はどちらかというとこちらではないでしょうか?ゲーム世代と一言で片付けてはいけないのかもしれませんが、物事全てがゲーム感覚。そして全てが仮想の世界。自分で何かをしなくとも、どこかにお願いするところがあるはずだからそれを探す事を目的としてしまっている様な節がありませんか?マネージャになって部下を育てる事も一つのミッションかもしれませんが、会社自身が社員の教育/育成よりも、短期的な利益の追求を優先させてしまっている様なケースでは、ともかく部署としての結果を出す事が優先され、人材育成によるポテンシャルの低下をマイナス評価にしかしてくれないのではないでしょうか?

斎藤昌義 Saito,Masanori さんのコメント...

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ

この言葉は私も共感します。ただ、これができるようになるためには、徹底した内省と分析が必要ではないかとおもうのです。

言葉伝えるか、態度で伝えるか、あるいはその両方か・・・どちらにしても、何が人を育てるかを追求し、自覚しているからこそできることであるように思います。

この文書でも書かせていただきましたが、仕事の意義を理解させ、自らの成長を楽しむことができるように環境を整えることが、大切なように思います。

教えることではなく、やらせること。学ぶかどうか、成長するかどうかは、結局は本人の問題です。ただ、その機会を提供することが、マネージャーの役割であり、育成の根幹にあるべきかと信じております。