2013年6月22日土曜日

「全員営業」という精神的負担と本当の意味

「全員営業で頑張って欲しい。」

こういう言葉を安易に使う経営者も少なくないようです。

「営業じゃないのに、自分も営業して案件を見つけてこなきゃいけないんだ。」
「開発でめいっぱいなのに、売り込みなんかできないし・・・」
「営業センスのない自分に、営業しろと言われてもねぇ・・・」

その心を丁寧に伝えないままに、「全員営業」という言葉だけが一人歩きし、時にして現場に大きな負担を与えてしまっていることがあります。

「営業があるからこそ自分たちの仕事があり、給料がもらえる。だから、営業は自分のため。営業という意識を持って働かなきゃいけない。」

「分かっちゃいるけど、じゃあ営業できるかと言われても・・・」

こういうことになってしまうのは、「営業」という言葉を共通の理解がないままに、それぞれに解釈してしまっているからなのでしょう。

「営業」を「目的としての営業」、「行為としての営業」、「職務としての営業」に分けて考えてみるといいかもしれません。

目的としての営業
営業の目的は、お客様の価値を高めて、その対価として代金を頂く行為です。モノやサービスは、お客さまの価値を高める手段であり、それを売ることが目的ではありません。  
「お客様の価値」とは、お客様の業績の向上、つまり売上や利益の拡大かもしれません。あるいは、働きやすい環境を作ることかもしれません。これまでにないビジネスを始めることかもしれません。それを知り、実現することが営業の目的なのです。

行為としての営業
どうすれば、お客様の価値を高められるかを追求することです。「営業活動」と言い換えることができます。  
「営業活動」とは、お客様の業務や経営について徹底的に理解し、深く考察することです。そういう話題をお客様と語り合い、強固な信頼関係を築くことです。そして、解決すべきテーマ、すなわち案件を明らかにします。その上で、内容を具体化し、解決に向けた取り組みを実施することでお客様と合意することです。

職務としての営業
「行為としての営業=営業活動」全般に責任を持ち、円滑に進める任務や仕事です。利害関係の違いを調整する、金額を交渉する、必要なリソースを調達・手配するなどの仕事です。  
「行為としての営業」で、お客様と合意したことを実現するためのプロデュースの仕事と言い換えることができます。様々な協力者やお客様の協力を引き出し、受注を獲得すること。そして、デリバリーの成功のためにPMを支援し、お客様の満足と対価の回収を確実に行う仕事でもあります。

このように考えてみると、「全員営業」とは、「目的としての営業」を全員で共有することに他なりません。そして、「行為としての営業」や「職務としての営業」は、それぞれの役割において、自分の責任を果たすことではないでしょうか。

例えば、エンジニアであれば、お客様の価値を高めるために、業務をどのように変えればいいのか、どのようなテクノロジーを使うべきか、どのような開発手法や運用の方法を使うべきかを調べ、提言することが「行為しての営業」における役割となるでしょう。また、提案書の作成に協力し、必要なシステムの構成や技術的な助言をすることが「職務としての営業」における役割になります。

大切なことは、「目的としての営業」を自覚し、お客様の価値を高めるために自分ができることは何かを、それぞれの立場において追求することです。だれもが一律に「職務としての営業」をこなすことではないのです。

「全員営業」とは、決して精神論ではありません。同じ目的を共有し、お客様の価値向上のために、全員がそれぞれの役割を全力で果たすことです。

とても当たり前のことです。「全員営業」などと、取り立てて言う必要などないのでは、という意見も聞こえてきそうです。

その通り、それができていれば、その必要もありません。しかし、営業が、「お客様の価値を高めて、その対価として代金を頂く行為」であるという、共通の理解が棚上げされ、モノやサービスを売ること、システムを開発することなどの手段が目的となってはないでしょうか。お客様の業務や業務に関心を持たず、自分が何のためにやっているかが分からないままに、日々の職務をこなしてはないでしょうか。


そういう現実を見つめ直し、当たり前に立ち返る言葉が、「全員営業」なのだと考えてみてはどうでしょう。

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