2012年10月6日土曜日

営業の感性・貴方は感性の高い行動をしていますか?


 感性とは、本来、美や善などの印象を知覚する能力です。これは非言語的、無意識的、直感的なもので、例えば何らかの音楽に「素敵」と感じることや「自分は好きじゃない」と違和感を覚える感覚を引き起こす能力です。

 営業における感性とは、「また会いたい」、「話したい」、「相談したい」と相手に思わせる能力です。そのためには、「できる」、「頼れる」、「よく知っている」といった理性面で、能力の高さを相手に感じさせることができること、そして、「いいひと」、「話しやすい」、「気持ちがいい」といった、感性面で人として好意を感じさせることができることです。

 このような能力は、営業活動を円滑に進めるために必要なもので、特に新規顧客へのアプローチにおいては、この「営業としての感性」が、決定的な影響を及ぼすこともあります。

 この感性を哲学的に議論しても、行動として表現できなければ、何の役にも立ちません。そこで、「感性の高い営業の行動は何か?」という視点でチェックリストをまとめてみました。これを使って、営業として感性の高い行動ができているかどうかを振り返ることができます。



お客様について理解できている
 公式に公開されている情報ばかりでなく、第三者からの情報や評価、対立した意見、競合他社や業界に関わる情報、裏話など、公開、非公開を問わず広くお客様について精通していることが必要です。

 情報の感度が高ければ、案件獲得のチャンスを広げることができます。また、お客様への説明や説得に自信を与え、幅広い情報に裏付けされた話は、お客様の信頼感を高めることになります。

 営業活動は、すべからく情報を手に入れることから始まると言っても過言ではありません。求められる情報は、広範にわたりますが、次のように3つに区分して考えて見ましょう。

お客様の会社について理解するために必要な情報
ニュースやプレスリリース、社内報やIR情報(財務諸表等)などの公開情報、個人的に親しくなったお客様から「今、販売システムの顧客情報管理のセキュリティに問題があってね」、「こんど、宮城の工場に新しいラインを新設するに当たり工程管理をどうするか検討しているんだ」といった未決定、未公表の情報です。
意志決定に関わるキーパーソンの個人情報
案件の意志決定は、会社としての重要性によって判断されますが、その評価を行うのは個人であり、特に意志決定に大きな影響力を行使できるキーパーソンの個人的意志が判断を左右します。
その方の関心事や価値観、意志決定の基準となるもの、社内における評価、人間関係など、多面的に個人の人となりを知り、自分たちに有利な意志決定を引き出すための情報提供や提案活動を行う必要があります。
世の中の社会常識
直接案件に関係がなくても、お客様との日常的会話に話題を提供することも必要です。特に相手が経営者となれば、社会や経済、経営に及ぶ広範な知識が貴方への信頼感を高めます。
これらは、一夜漬けで手に入れられるものではなく、習慣として、新聞や雑誌、Webなどの様々な情報ソースに触れ、日頃から積み重ねておくことしかありません。そういう習慣を身につけることも、営業としての感性を磨く上では大切なことです。
お客様が話をしやすい雰囲気を作ることができる

 こちらにとって関心があるかどうかにかかわらず、相手にとって関心のある話題を提供することができなくてはなりません。また、話の内容への同意、確認など、お客様の思考の整理や発言を促すことで、お客様が気持ちよく話ができる環境を演出することも大切です。

関心のある話題を提供する
案件に関わらず、相手が関心を持っている話題は何かを提供します。公開されていない情報、例えば自社の内部事情やお客様の他部門の情報などは、関心の高いもののひとつです。ただし、機密やプライベートな話題に触れることは、逆に「どこでもそんなことをはなしているのか」と、不信につながることになります。注意が必要です。
また、ITのトレンドやビジネスの動向について新たな視点を提供することや、同じ話題でも、わかりやすい整理した情報を提供することで、喜んで頂くことはできます。
お客様が欲していることで、かつ新規性の高い情報とは何か、言い換えれば、「びっくり」、「凄い」を感じさせる情報を常に用意しておくことを心がけましょう。
思考の整理や発言を促す
会話の相手が、こちらの尋ねたいことについて、理路整然と整理できているとは限りません。むしろ、そのようなケースの方がまれなことです。
相手の話を聞きながら、相手の思考を整理することは、こちらが必要な情報を手に入れるために大切なことです。その一方で、それは話をする相手にとっても、自分の考えを整理する手助けとなり、ありがたいものです。
相手の話をただ聞き取ってメモするだけではなく、曖昧なところの確認、視点を広げて位置づけを明確にする、など、こちらから積極的に働きかけながら、会話をすすめるべきです。会話内容を整理するために以下の方法は効果的です。
  • 「このように理解いたしましたがいかがでしょうか?」など、自分の解釈を相手に確認する。
  • 「なぜ必要なんですか?」「なぜこの期間なんですか?」など、「なぜ」の問いかけで目的や理由を確認する。
  • 「こういう場合は、どうなんでしょうか?」など、想定される可能性を広げ、状況把握をする。
  • ディスカッション・ノートを事前に用意する、あるいは、会話をはじめる前に議題や目次をホワイト・ボードに書き出し、会話のストーリーをあらかじめ示しておく。
  • 会話の内容をノートやホワイト・ボードに視覚的に整理し、これを確認をしながら会話する。
また、相手を話しやすい気持ちにさせるには、以下の方法が効果的です。
  • 他社の事例、第三者の意見などを引き合いに出し、こちらの一方的な考えではないことを示しながら、相手の抵抗感をなくす配慮をする。
  • 自分の意見に対立する意見も自ら提示し、両者のメリット、デメリットを示しながら、自分の意見の正当性を相対的に示し、相手に納得を促す。
  • 「何かありませんか」ではなく「これについてはどうですか」と質問し、相手の確認を引き出しながら課題やニーズの確認を行う。
  • お客様の発言を遮らず、相手の話を呑み込むように一呼吸置いて、自分の発言をする。
会話がうまくいくかどうかは、相手の意識や気持ちの変化をリアルタイム把握し、適切に対処することです。自分の発言は、相手にどんな気持ちの変化を起こさせているのか、相手は今何を伝えたいのか、何を話さないようにしているのか・・・そのような想像を常に働かせながら、会話をすることが大切です。自分の言葉に酔いしれ、自分の気持ちに埋没しないことです。そして、「自分がそうされたらどうだろう」という目線を忘れないようにしたいものです。

相手の意志や結論を確認する
リップサービスという言葉があります。会話の雰囲気を壊さないように、相手の歓心を誘うような言葉を使うことがあります。また、曖昧なままで会話を終わらせようとすることもあります。
相手が、重要な要件について、このような態度を取ることがあり。しかし、そのままにしておくと、意識のすれ違いが拡大し、後々の混乱やトラブルになりかねません。
金額のこと、競合他社のことなどは、聞きにくいという意識が働きがちです。しかし、基本的には、言葉を濁さず、率直に聞くことです。相手も仕事です。遠回しな会話は時間の無駄という意識があります。礼儀を忘れず、丁寧に質問すれば、相手もそれに答えてくれます。それで応えてくれないとすれば、なにかそうしたくない理由があるはずです。むしろ、そちらを探るような会話をすべきです。また、その相手から情報が得られないときは、別の方と話をすべきかもしれません。
具体的には、次のような話し方が効果的です。
  • 「この内容で提案をさせていだきますがよろしいでしょうか」というように、こちらの考えを提示し、相手の反応を確認している。ただし、方針、重点、構成、金額、体制などの内容を具体的に提示する。
  • 予算の上限、受け入れ可能な金額のレンジを直接数字で示して確認する。
  • 「私ども以外にどちらが提案されているのでしょうか」「他社さんの提案内容はどのようなところに魅力を感じ、弱点があるとお考えですか」など、競合他社について率直に聞く。
  • 「私どもにご発注頂くためには何ができればいいでしょうか」など、採用の条件を聞き出す。このような会話により、こちらへの期待、あるいは、既に他社に決めているかどうかを確認することができる。
立場を離れて会話できる時間を作る
部下や上司など、本人以外の第三者がいる場所では、話せないことがあります。また、立場上本心を語れず、話を曖昧にしてしまうこともあります。また、その逆に、強気の発言で、自分の存在をアピールしようとすることもあります。
会話とは、そのような場の力関係において、大きな影響を受けるものです。従って、場が変われば、異なった会話が交わされることになります。
是非とも手に入れたい情報は、公の場で交わされる公開情報ではなく、まだ未決定であり、重要性の高い非公開情報です。このような情報を手に入れるためには、相手と2人で会話する時間を作ること、あるいは、非公式な会話ができる、あるいは交わされている場所に自ら赴き、情報を手に入れる努力も怠るべきではありません。
具体的には、以下のような行動が効果的です。
  • 必要に応じて、二人で会話する時間を作り、大勢の前では聞けないこと、話せないことを会話する。
  • 会食にお誘いする。ただし、頻度は控えめにすること。頻度が高いと不信感をいだかせる。
  • たばこ部屋や昼食に同行する。
  • 自分たちが出展しているか否かにかかわらず展示会やセミナーに同行する。

お客様から安心・信頼される状況を作ることができる

 会社の看板を外し、個人としてお客様に好感や安心感、知性や誠実さを印象づけることも大切です。それができれば、相手は、安心して仕事を任すことができる存在として、貴方を受け入れ手くれるはずです。

相手に好感を与える
持ち物や服装、誠実な応対などは、相手に良い印象を与えることができます。これは個性にも関わることであり、絶対的な基準を示すことはできませんが、おおよそ、以下の点は抑えておきたいところです。
  • 文房具に安物を使はない。
  • 服装のセンスや清潔さに気を遣っている。
  • メモを取り、お客様の話しを真剣に聞いている姿勢を示している。
  • お客様の話に相槌を打ち、真剣に聞いている姿勢を示している。
  • 笑顔で応対する。
関心を示していることを伝える
人は、他人が自分にどう関わってくれるかにより、自分を評価し、自分の位置づけを確認しています。そして、それが自分への敬意や信頼を感じさせるものであれば、相手にも同様の感覚を持つ傾向があります。
それは、決して大仰なことではなく、日常のさりげない行動です。本来ならば、日常の習慣として意識せずにできるようになることです。しかし、それができていないとすれば、まずは意識して行動しなければなりません。
具体的には、以下のような行動です。
  • 訪問の後は確認や御礼のメールを送る。
  • 仕事や個人的なことでのお祝い事、賞賛すべき出来事などに、電話やメールで賛辞を伝える。
  • お客様に関心のありそうなニュースや話題を見つけたらその情報をメールや会話の席で話題として提供する。
ほかにもいろいろあるでしょう。大切なことは、相手が何に関心があるか、何をしてもらいたいか、何を心地いいと感じるのかについて、想像力を働かせることです。

 「感性」とは、教科書で学ぶだけでは身につけることはできません。自ら行動し、体験的に感じ、それを繰り返すことでしかありません。

 営業の仕事は、このような感性を土台として、プロセスを積み上げてゆくことかもしれません。しっかりとした土台の上に、丁寧に建物を築き上げてゆく。営業の成果は、この両者の完成度を高めてゆくことで、結果としてもたらされるものと、心得ておくべきでしょう。

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