2012年8月19日日曜日

ゴールから始める提案活動

「この案件を獲るために、お客さま内に大きなシェアを持つA社の下でやるのがいいように思っていまして、その辺の関係作りからはじめようと思っています。」
「手近な運用から入り、何を提案すべきかを探った上で、提案をまとめようと考えています。」
「まだまだ、お客さまの考えを十分に聞き取れているとは言えません。もう少し時間をかけて、情報収集をしてから、提案しようと考えています。」

こういう話しを聞くと、「本当にやる気があるのですか?」と申し上げてしまいそうになります()

確かに、適切なアプローチ・ルートを考えることや、お客さまの情報を徹底的に収集し的確で精緻な提案内容を組み立てることを否定しているわけではありません。それは、是非とも必要なことです。

しかし、それは提案をクローズするために必要なことではあっても提案のチャンスを得るためには必ずしも重要なことではありません。

残念ながら、このようなアプローチを続けている限り、いつまで経ってもどこかの下請けに甘んじるか、自ら進んで競合状況を演出することになると思います。

提案活動においてまず行うべきことは、意志決定に関わる人が誰かを見つけ出し、その方と提案の目的や本質を合意することです。言い換えれば、「なるほど、これはいい、これでやりましょう!」と、お客さまと握手を交わすことです。

具体的には、次の3つのステップをこなすことです。
  1. 課題を解決し、ニーズを満たした結果、「どうなっていたいのか」を合意すること。「どのように満たすか」ではありません。「実現の手段(To Do)」ではなく、「あるべき姿(To Be)」を合意することです。
  2. 結果に至る大きなマイルストーンを明らかにすること。それは、決して、具体的な製品やサービスの名称を示すことではなく、どのような段階を経て「あるべき姿(To Be)」に至るかを明らかにすることです。
  3. 最後に、自らの強い意志と安心感をお客さまに与えること。「あるべき姿(To Be)」を実現するにあたり、自らもリスクを覚悟で真摯に取り組む姿勢を示すことで、お客さまに安心と信頼を与えることです。

お客さまは、常に厳しい現実に縛られています。ですから、お客さまだけでは、どうしても現実の拘束条件を前提に、手段(To Do)に縛られた解決策しか考えられないことがよくあります。だからこそ、営業は、そんなお客さまの夢を代弁し、しがらみのない本来のあるべき姿(To Be)を提示してあげるからこそ、存在価値があるのです。

そして、そのあるべき姿(To Be)に相対する現実についても冷静に目を向ける必要があります。当然、そこにはギャップが存在します。そのギャップを明らかにし、埋める手段を考えなくてはなりません。しかし、まずは、ゴールをお客さまとしっかり共有すること。それがあって、私達ははじめて、提案活動のイニシアティブを握ることができるのです。

人は、明確な目的を持たずして、前へ進もうとは思いません。その目的が、魅力的であればあるほど、人はその困難を乗り越える勇気と力を高めてゆくことができるのです。

提案活動とは、お客さまとあるべき姿を合意すること。そして、一緒になってそのゴールを目指しましょうと握手することが、出発点です。それを実現するルートや手段を具体化することは、クローズのための活動であり、スタートのための活動ではありません。

100点満点の内容を示すことにこだわり、お客さまがなるほどと思える本質であり、核心が何かをおろそかにしては、本末転倒です。それ見出すために、現場に入り込み時間をかけて情報収集してもなかなか目的を達することはできません。意志決定に関わる人や現場に精通したベテランの方と本音で語りあうことです。

だらだらと時間をかけるのではなく、聞いては簡単な資料にまとめ、「あるべき姿はこうですね」と仮説を提示する。それを何度かお客さまとの間で、やり取りすることで、合意できる「あるべき姿」が見えてくるはずです。

始めるために時間をかけるべきではありません。まずは、「あるべき姿」を合意することから、始めてみてはいかがでしょうか。

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