2012年1月28日土曜日

ITをコモディティ化する技術革新、SIerはどうやって生き残るのか

「EMCジャパン、2012年は顧客の新規ビジネス創出を支援 」 
(ZDnet Japan / 2012年01月26日)

こんなタイトルが飛び込んできました。時代は動き始めている・・・そんな想いがこみ上げてきました。

ITの技術革新の歴史を振り返れば、ITをコモディティ化する歴史でもあります

新しい技術が世の中に出現すると、最初はその技術そのものが差別化の源泉となります。そして、それを使いこなす人もまた高度な技術が求められ、そこにビジネスが生まれます。

その後、その技術が普及し始めると、機能や性能の向上を競う技術競争が始まります。その結果、各社の製品はどれもが同様の水準で高止まりし、こんどは価格競争へと移ってゆきます。その結果、価格の低下が進みさらに普及することになります。

また技術競争は、同時に技術を隠蔽化する競争を生み出します。高い技術力がなくても、誰もが使えるものを創り出そうという競争です。見方を変えれば、その技術が実現する機能をどれだけ簡単に使えるかを競うものです。これにより、さらに普及に弾みがつくと共に、プレーヤーが拡大してゆきます。これがコモディティ化の歴史です。

コモディティ化された技術は、技術そのものでは差別化ができなくなってしまいます。そのため、差別化の源泉は、その技術を使ったサービスやビジネス・モデルへと変わってゆくことになります。

EMCジャパンの戦略は、ストレージ製品が、まさにコモディティ化のステージに位置し、もはや技術だけでは競合優位を見いだせなくなったことを示していると言えるでしょう。そして、競争力の源泉を「顧客の新規ビジネスの創出」という、技術とは次元の異なる領域に求めようという動きなのです。

ストレージに限らず、サーバーやネットワーク機器、アプリケーション・パッケージの多くが、コモディティ化のステージにステージに立たされています。これは、標準化、オープン化の流れと合流し、ますますコモディティ化を加速しています。そして、この流れの中で、SIやシステム運用などのITサービスも同様に、技術力や開発力がコモディティ化し、グローバルな価格競争の中で収益を確保できない時代になりつつあります。

新しい技術の創出が廃れることは決して無いでしょう。しかし、創出された技術が、イノベーションをもたらすものであればあるほど、コモディティ化への動きを加速することになります。ITはこのような歴史のサイクルの中に埋め込まれているのです。

このような歴史の必然の中で、ビジネスを拡大するためには、ふたつの戦略が考えられます。

ひとつは、技術の創出に関わるか、あるいは未だ黎明期の技術にいち早く係わり、技術そのものを競合優位の源泉とする戦略です。例えば、HTML5、スマートデバイス、ビッグデータ、Node.js、OpenFlowなどは、今まさにそのステージにあります。しかし、その技術が本当に普及するのか、あるいは普及の見通しはあるにしてもどれほどのスピードで普及するのかを見誤れば、大きな損失となりかねません。

もうひとつは、コモディティ化した技術と新しい技術を組み合わせた新しいビジネスを競合優位の源泉とする戦略です。つまり、技術そのものではなく、技術の応用であり、技術の組み合わせによる新しいビジネス・プロセスやビジネス基盤の創出です。スマート・シティはその代表的なものと言えるでしょう。これには、社会や産業についての広い知見も必要ですが、既存のものにとらわれない発想力や構想力などが必要となります。また、それは世の中に無いものを生み出そうというわけですら、それが普及する保証はありません。

もちろんこれ以外にも様々なビジネス戦略は考えられます。しかし、成長分野の戦略となるとリスクを冒す覚悟と挑戦が必要になることは歴史の必然です。そして、おそらくは多くの成長分野のビジネスは、このふたつの軸の周辺に拡大してゆくのではないかと考えています。

ITの歴史の起点を1964年の汎用機/メインフレームの出現とするならば、すでに50年近い歴史を刻んでいます。そこにはいくつもの法則を見て取ることができます。そこに出現するキーワード、機能や性能はかつてのものは明らかに異なります。しかし、その背後にある歴史のフレームワークが根本的に変質しているとはなかなか思えないのです。

改めて、これからのITビジネス戦略を考えるとき、この歴史の必然は参考になるはずです。今何ができるのか、どうすればお客様の期待に応えることができるのかだけではなく、リスクを覚悟してでも自らが新たなステージのリーダーとなるために何をすべきかが、競合優位を生み出すことになるはずです。


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