2011年6月25日土曜日

「問題」で満足し「課題」を追求しない残念な営業たち

 「なにか、お困りのことはありませんか?」
 もし、あなたが、こんな質問をされたら、相手に、どう応えるでしょうか。
 
 「突然、そんなことを言われても・・・」、「いゃあ、特にないですね。」、「そんなこと言われても困るよ。」・・・
 
 そんな回答をするのが、精一杯ではないでしょうか。では、次のような質問は、どうでしょう。
 
 「御社の問題は、こういうところにあると考えています。ですから、このような取り組みをされるべきだと思います。」
 
 もし、私なら次のように回答するでしょう。
 
 「有難うございます。なるほど、よく分かりました。社内で十分に検討の上、後日、改めて連絡させていただきます。」と申し上げて、きっと何もしないでしょう(笑)。

 私にすれば、「御社の問題」と言われても、「なるほどなぁ」と思うかもしれませんが、それを解決しなければならないほどに、差し迫っているとは思えないのです。大人ですから、礼儀はわきまえています。しかし、こちらには、それを積極的に解決しようという意欲はありません。
 
 お客さまの課題を見つけ、その解決策を提案に結びつけるのが、営業の仕事です。ソリューションとは、お客さまの課題を解決することです。しかし、これでは、解決すべき課題を見つけることが出来ません。つまり、仕事になりません。
 
 では、どうすればいいのでしょうか。その答えは、普段私たちが、漠然と捉えている「問題」や「課題」という言葉の本当の意味を正確に理解することで解決します。
 
 「営業活動とは、「問題」を見つけることから始めます。そして、これをお客さまの「課題」に変えてゆく取り組みです。
 
 ますます分からなくなったかもしれませんね(笑)。では、この違いを考えてみましょう。きっと、この違いが理解できれば、前述のふたつの会話が、どれほど、お客さまの「課題」を見いだすには、ほど遠い質問であるかが、分かると思いますよ。
 
 まず、「問題」についてです。「問題」とは事実のことです。お客さまの情報を整理することで、お客さまの現状が明らかになります。その現状が、お客さまにとって将来のリスクであり、不利益をもたらすものであるとすれば、それが、お客さまの「問題」です。

 ただし、お客さまは、その「問題」に気付いているとは限りません。あるいは、気付いていても、問題の重要性やこれに対処する必要性を感じていないかもしれません。そこで私たちは、お客さまに代わり、お客様の事実を整理し、分析することで、そこにある「問題」を明らかにすることから始めます。

 アカウント・プラン作りをされている営業の方も、多いのではないでしょうか。アカウント・プランとは、このようなお客さまの事実をわかりやすく整理し、そこにある「問題」を探す活動です。しかし、それは、私たちが、勝手に「大変だ!」と思っているに過ぎないのです。お客さまも同じように「大変だ!」と思っていただかなければ、お客さまは、行動を起こすことはありません。

 もうおわかりですよね。そう、お客さまの「課題」とは、「お客様自身が『なんとかしなくては大変なことになる』と認識した事実=問題」なのです。
 
 「課題」とは、お客さまの『現状』と『こうありたいと望んでいること』との間にあるギャップです。つまり、お客さまが、そのギャップを埋めたいという意志がそこにある場合、「問題」は、「課題」となります。

 提案活動を始めるに当たり、事実としての「問題」を私たちが、知っているだけでは不十分です。また、お客さまに、その事実を伝えるだけでも意味がありません。それを解決したいというお客さまの意欲を引き出す必要があります。もし、お客さまに解決したいという意欲がなければ、貴方の提案がどんなにすばらしいものであっても、お客さまは、決して受け入れません。

 お客さまの課題を明確にする取り組みとは、お客様に、「将来のリスクや不利益を抱えているという事実」=「問題」を認識させ、それを、「この問題を解決したいという意欲」=「課題」に変えてゆく取り組みなのです。
 
 私たちは、この「問題」と「課題」の違いを、正しく理解しておくべきです。独りよがりの「問題」をお客さまに押しつけても、お客さまが、それを自分の「課題」として、受け入れない限り、ビジネスは前に進みません。
 
 今日のあなたは、とてもうまく説明できたかもしれません。「これで分からないなら、分からない方がおかしい」と思うかもしれません。確かに、あなたはうまく事実=問題を伝えることが出来たかもしれませんね。しかし、どうでしょう、お客さまに、その問題を解決したいという意欲=課題を引き出すところまで、お客さまと会話できたでしょうか。あなたは、そのことを確認しましたか?
 
 課題発掘とは、お客さまの問題を見つける活動ではありません。お客さまに解決したいという意欲を引き出す活動です。
 
 もうおわかりですよね。なぜ、最初のふたつの会話が、お客さまの「課題」を見いだすには、ほど遠いかを。
 
 ところで、「意欲を引き出す・・・」とは、どういうことでしょう?これについては、いずれまた。


 「ITで日本を元気に!」 このメッセージを東北の地から発信してゆくためにできることは何か。それは、ITビジネスに関わる私たちの営業力やビジネス開発力を高めてゆくことに他なりません。東北地域だけではなく、日本全国に、この地の優れた技術や人材を売り込む力を持つことができれば、その力によって、日本の元気を取り戻し、震災の復興にも寄与するはずです。

 この「緊急研修会」は、そんな趣旨のもと、トライポッドワークスの佐々木社長のご協力をいただき、ITビジネスに関わる皆さんの営業力とビジネス開発力を強化しようと開催されるものです。

 売り込みのための紐付き研修ではありません。ぜひ、地元の皆さんのご参加を期待しております。
 
 参加費は無料です。くわしくは、こちらをごらんください。


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2011年6月18日土曜日

「OJT」というほったらかし、「育成」という名の押しつけ

 「最近の新人は○○○だ」と一般化して評する人も少なくありません。しかし、本当にそうなのでしょうか。自分の時代を考えてみると、大して変わらないようにも思えます。
 
 自分で考えて行動できない、保守化している、覇気がない・・・大人達は、自分たちの時代を懐かしみ、あたかもその時代こそが良かったのだと言わんばかりに、あえて、その違いを強調しているようにも思えてしまいます。
 
 また、そんな議論の中に、そういう若者達を世の中に送り出した自分たちの責任について語られることは少ないようです。
 
 ITソリューション塾をもう3年やっています。昨年2人の新入社員が、この塾の門をたたきました。なぜ参加したいのかと聞くと、「配属が決り、現場に出て、何も知らないことに愕然としました。このままでは、やっていけません。ぜひ、勉強させてください。」というものでした。
 
 もちろん、会社の正規の研修ではありません。ブログで見つけて、連絡してきたとのことですが、当然、参加費は、自腹です。それでも参加したいという若者もいるのです。
 
 このように志の高い若者もいる、そうでないものもいる。時代は変われど、いつの時代も、いろいろな若者がいるということには、かわりがないと思っています。
 
 もちろん、それぞれの時代の社会環境の違い、そこから生ずる若者の意識の違いまでも否定するつもりはありません。例えば、社会学者である山田昌弘氏の著「なぜ若者は保守化するのか」を読むと、なるほどとうなずけることも少なくありません。例えば、 
  • 産業のサービス化、IT化の流れの中で、複雑で知的な労働については正社員として雇用し、単純労働は非正規雇用者で賄う。結果として、正社員需要が減っている。
  • ITやサービスを主体とする知識型産業の富の源泉は、土地や工場などではなく、能力のある人間である。そうなると、土地のある地方であることの必然性は無くなり、効率の点から都会に人が集まり、富も集中する。結果として地方が衰退する。
  • 少ない正規雇用と都会への集中、産業の空洞化により、市場の成長も限られてきた。高度経済成長の時代は、努力すれば報われる「努力保証社会」であったが、努力の積み重ねても、収入や社会的地位に直結することはなく、努力をしても「バカらしい」という意識を生み出している。だから、成功は、「宝くじ」頼みであり、運を天にまかせるしかないというあきらめが生じている。
 そんな中で、自分の生活の安定を図らなければならず、結果として保守的な志向を持たざるを得ないというものです。
 
 確かに、このような社会的な背景から生まれる「若者意識」があることを否定するつもりはありません。しかし、だからといって、おしなべて、その平均を目の前にいる新入社員に押しつけて考える必要もないように思うのです。
 
 以前、「OJTというほったらかし」という記事を書きました。「我が社は、実践で人を育てる。」だから、OJTで十分という会社もあります。その志は、立派だと思います。しかし、実際のOJTの現場は、先輩社員が、部下を単なるアシスタントや雑用係として使っているだけであり、目標設定はなし、OJTリーダーに育成のノウハウもなければ、志もないのです。
 
 確かに、これで育つ若者もいるのですが、それはOJTの成果ではなく、「これじゃあ大変だ」という本人の危機感であり、自助努力でしかないのです。つまり、育つか育たないかは、本人任せのほったらかしなのです。言うなれば、運任せです。
 
 育たなければ、あいつには才能がなかったとか、仕事があっていなかったと自らの責任を棚上げにする。それをOJTといってはばからない大人の無神経を悲しく思います。
 
 また、山田氏の言うかつての「努力保証社会」では、お客さまに行けば仕事がもらえました。「靴底を減らして、なんぼの世界」だったわけで、今管理職の立場にいる人の中にも、それで成功した人も多いと思います。
 
 しかし、もはやそんな時代ではないのです。靴底を減らして、お客さまを足繁く回っても、仕事をもらえる時代ではありません。そんな今を見ようともせず過去の成功体験を、そのまま押しつける。それでは、うまくゆくわけはなく、若者達に「バカらしい」という意識を持たせてしまう。
 「バカらしい」と開き直るくらいならまだいいのですが、「自分は役に立たない。何をやってもダメだ・・・」、そう考えて、心を病んでしまう。こうなってしまうと、本当に不幸です。これは、本人の責任ばかりとも言えないように思います。
 
 では、どうするか。まずは、今の若者達と真剣に向かい合うことです。自分の成功が、今も通用するという思い込みを捨てることです。「こうすればいいんだ」と自分の主張を押しつけないことです。
 
 自慢できる成功も、恥ずかしい失敗も、全て素直にさらけ出すことです。そして、独りの人間として、部下の声に素直に耳を傾けることです。そうして、自分ならどうするかを、真摯に考えることです。
 
 その上で、自分は、どう思うかをしっかりと伝えることではないでしょうか。それは、決して、過去の成功の自慢話をすることではありません。「俺の若い頃はなぁ・・・」は、もはや過去の栄光に過ぎないことを自覚すべきです。
 
 「本質おいては一致し、行動においては自由に、全てにおいては信頼を」とは、ドラッカーの一節です。まさに、本質を部下と語り合い、一致する。後は信頼して、まかせておけばいいのです。そして、困ったことや助けを必要とするときが来たらすぐに行動するセーフティネットを提供する。そんな、心の準備をしておくことでしょう。
 
 自分で考えて行動できない若者が多くなったのではなく、このような現実を自分で考えて行動できない大人達が多くなったことの方が、むしろ問題なのでは・・・と考えてしまいます。


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2011年6月11日土曜日

オヤジの小言は伊達じゃない場合もある

 「お客さまの言われたことにすぐに反応すること。クイック・レスポンスを続けていれば、今度はお客さまから頼りにされるようになる。」

 IBMに入社して間もない頃ことだ。自分のやったことが全て裏目に出るような気がするし、仕事の要領も今ひとつつかめず、胃の痛い毎日を過ごしていた。何も楽しいことは無かった。朝は早いし、終電前に家に帰ることは無かった。

 そんなとき、当時の上司であった石川さんに、「このまま仕事を続けていけるでしょうか。私は、営業という仕事に向いていないんじゃないかと思うんです。」そんな弱音を吐いたときに、彼が言ってくれたひとことである。

 それが、切っ掛けとなったのか、そうではなかったのかは、正直言うと、今ではよく分からない。ただ、未だに、営業という仕事にこだわっていること、そして、30年近くも前の言葉を今でも覚えていることを思うと、自分の営業人生の地層になったことは、間違えないだろう。

 石川さんとは、以前、日本情報通信の副社長をされていた「石川忠久」さんだ。昨日、会食をさせていただいた折、そんな話題に及び、懐かしいやら照れくさいやらの楽しい時間を過ごさせていただいた。

 たとえどんなに核心を突いた内容であっても、それを伝える言葉や表現が、シンプルでなければ、人の心には、なかなか届かないものである。改めて、彼の言葉の価値をかみしめている。

 彼以外にも、私の仕事に大きな影響を与えた人物と言えば、我が先輩営業の小寺さんであろう。8年間同じお客さまを先輩後輩で一緒に担当させていただいた。

 彼もまた本質とシンプルにこだわった人物だ。

 彼の出社は、決まって昼前、帰りは終電後。彼の行動を今冷静に考えてみるとおかしな話である。

 しかし、新人、若造の私にはそんなことを考えている余裕などあるはずもない。帰りはどんなに遅くても、定時前に会社に出てくるのは当然と考えていた。自ずと寝不足の毎日。金曜日になるのが楽しみで、日曜日の夜は、「また、明日から仕事だぁ」と思うと、再び胃が痛くなる日々を送っていた。

 当時は、パワーポイントもなく、ワープロもまともな図形など描ける能力などない。そんな時代に、手書きで資料の構想をまとめ、ワープロで文字を清書し、それを切り貼りし、鉛筆で図を描き込む。コピーをすると貼り合わせたところが目立つので、その部分をメンディング・テープで覆う・・・もう、大変な作業だった。

 「これでいいでしょうか」と、彼にもって行くと、資料をさっさとめくり、おもむろに赤ペン取り出す。そして、苦労をして作り上げた資料に、その赤ペンで、どんどんと修正を入れてゆく。そして、「こんなんじゃあだめだぁ・・・」と言って、真っ赤に書き込まれた資料を、びりっと破いてしまう。鬼だと思った(笑)。
 
 わかりやすさは、本質とシンプルである。彼には、そんな一貫した基準があったようだ。おかげて、徹底的に鍛えられた。今では、私は、それを生業にしている(笑)。
 
 以前、ある人に言われたことがある。「資料の美しさにこだわっても、意味がない。問題は中身だよ。」。ほんとうにそうだろうか。たとえその中身が、どんなにすばらしいものであったとしても、それが相手に伝わらなければ、独りよがりだ。相手に伝わってこそ、中身は、価値を持つことになる。

 資料を美しくしようとしているわけではない。どう表現すれば、相手に伝わるだろうか。そう思えば思うほど、内容は核心に迫り、本質だけが残る。それが絵になって残る。すると結果は、美しくなっている。それだけのことだ。
 
 独りでできる仕事などない。常に相手がいる。お客さまがいる。仲間がいる。本質とシンプルは、そういう人とのコミュニケーションを円滑に進めてゆく手段である。仕事は、はかどり効率がいい。結果として、成果も上がる。
 
 先輩達からの教えを改めて思い返せば、そういうことだったのだろうと思う。
 
 胃の痛い毎日を送っていた私も、今では新入社員を相手に営業研修の講師をさせていだくようになった。そんな私が、よく言う言葉がある。

 「"伝えた"という自分の満足ではなく、"伝わった"という相手の真実を大切にしてください。」と。
 
 時代は変わるが、仕事の本質は、今も昔も変わらない。改めて、先輩達の教えてくれた本質をありがたく思っている。



 「ITで日本を元気に!」 このメッセージを東北の地から発信してゆくためにできることは何か。それは、ITビジネスに関わる私たちの営業力やビジネス開発力を高めてゆくことに他なりません。東北地域だけではなく、日本全国に、この地の優れた技術や人材を売り込む力を持つことができれば、その力によって、日本の元気を取り戻し、震災の復興にも寄与するはずです。

 この「緊急研修会」は、そんな趣旨のもと、トライポッドワークスの佐々木社長のご協力をいただき、ITビジネスに関わる皆さんの営業力とビジネス開発力を強化しようと開催されるものです。

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2011年6月4日土曜日

あなたは、3年後に必要な存在ですか?

 最近、新入社員研修で、こんなことを話している。 
  • 法人ビジネスの営業は、英語でSalesとは、言いません。ただの販売員ではないんです。Sales Representativeといって、会社の代表として取引に責任を持つ人という意味があるんです。
  • 営業活動とはお客さまの困ったを解決するプロデューサー
  • どんな仕事にも、手順やプロセスがある。営業活動にも、営業活動プロセスがある。それは・・・
  • クラウドとは、歴史を振り返れば、きちっとした必然性がある。歴史や法則が分かれば、未来が予測できる
  • 暗記の勉強は卒業しなさい。言葉を知っていることと理解していることは違う。説明できなければ知っているとは言えない。これから必要なのは、わかりやすく説明できるという知識。
  • 伝えるべきは伝えたという傲慢は捨てなさい。相手に伝わったという真実を確認してこそ、コミュニケーションは成立する
  • 君たちは、今はタダメシを食らっている。いつまでもそれでいいのか。大人として恥ずかしいとは思わないのか。はやく、この屈辱から脱したいなら、寸暇を惜しんで勉強しなさい!
  •  ・・・ 
 などなど、小言オヤジの自覚を持ち、くどいと思われようが、ぐりぐりとやっている(笑)。たまには、眠り姫もいるが、まあ、総じて目を輝かしている。
 
 自分たちが何も知らない未熟者であるという自覚を持っている彼らにとっては、ひとつひとつが新鮮であり、どんどんと吸い込まれてゆく。まあ、中には吸い込みすぎて、確認テストの成績が、いまひとつというものもいるが、実践の現場で痛い目にあったときに、どこかで思い出してくれればいいと思っている。
 
 さて、翻って、私たち大人達はどうなのだろう。もちろん新人達と立ち位置や目線は違うものの、いったい何を知っているのだろうか。何ができるのだろうか。
 
 お客さまの経営や業務、社会やITのトレンドは、日々に移りゆく。今まで常識と思っていたことが、あっという間に非常識になっている。気がつけば知らないことだらけだ。そんな自分の無知を恥ずかしいと思う。こんなことを言うと、「勉強することが多すぎて・・・」という言訳をよく聞くが、だからこそ、勉強しなければと思うべきだろう。
 
 本や研修に出るばかりが勉強ではない。お客さまの「困った」を一覧表にまとめてみる。自分たちの強みを整理してみる。気付いたことや考えたことを書き留め、文章や絵にしてみる・・・さまざまな勉強の方法があるだろう。
 
 なぜそんなことが必要なのか。答えは明快だ。「タダメシを食う存在にならないため」である。言い換えれば、「お客さまにとって、会社にとって、いてもらわなくてはならない存在になるため」だ。
 
 先日、1000人規模のITベンダーで、経営幹部をされている方と会食を共にした。その会社で、リストラをしたそうである。我慢に我慢をしてきたのだが、このままでは、この先、厳しい状況に追い込まれる。余裕があるうちにということで、苦渋の決断をされたそうである。
 
 そのとき、だれを退職させるかを評価するに当たり、次のような3つのランクをもうけたそうだ。
 (1)3年後にこの会社にいてもらわないと困る人。
 (2)今いてもらわないと困る人。
 (3)今も代替がきき、3年後に期待できないひと。
 
 当然のことながら、(3)の方が対象になったそうだ。その数、2割ほどになったという。結局、1割ほどの方に退職をいただくことになったそうだ。
 
 IT業界は、もはやかつてのような成長産業ではない。成熟産業である。一見、新しい技術やビジネスが生まれてきているように見えるが、その一方で、もはやコモディティ化した技術やサービスは、その需要を減らし、オフショア化も進んでいる。先日、ITサービス産業に関する統計を見ていたのだが、明らかに国内市場は、供給過剰であり、限られた需要の奪い合いになっている。
 
 このような変化のただ中にあって、過去の常識など通用するはずはない。
 
 勢いや気合いだけでは、この変化に立ち向かうことはできないだろう。智恵が必要なのだ。それは、与えられるものではない。苦しんで、考えて、どうしようもなくなって、まいった・・・と思ったとき、きっと天が与えてくれるのであろう。
 
 現状の生産性やサービスの改善に取り組むことは、とても大切なことである。それなくして、今を生き延びることはできない。しかし、その現状が、大きく変わろうとしている。その変化を自分なりに読み解き、対処してゆく努力を併せて行なわなければ、3年後は、もはやその現状は、存在しないかもしれないのだ。
 
 先日、仙台に拠点を構えるトライポッドワークスの佐々木社長の話を聞く機会があった。彼は、震災後、甚大な被害を被った陸前高田で毎週のようにボランティア活動をされている。「ITで、日本を元気に」をテーマに、現地からの情報発信や住民サービスのためのIT環境整備のためにご尽力されている。
 
 彼が、こんなことを話されていた。「この震災で、変化のスピードが速まったようです。」
 
 まったく同感である。震災は、その直接的被害ばかりでなく、人々の心にも大きな変化を与えている。これまで、うやむやにせき止められていた変化の流れが、復興というより大きな流れの中で、一気に堰を切り、流れ出そうとしている。
 
 東北のIT産業の規模は、全国の1.8%だそうである。そういう流れだったのである。この震災は、ますます東北地域の需要を冷え込ませてしまうだろう。
 
 この変化は、日本全体の市場の縮図でもある。海外重視の動きは、業種を問わず大きな流れとなっている。今、この変化の意味と対策を考えなくて、どうするというのだろうか。
 
 「3年後に必要な存在」とは、そういうことに対応できる気力と知恵を持つ人たちなのだろうと思う。私も、是非そのひとりに加わっていたいと思う。

■ 緊急研修会:東北から全国へ
■ 実践!ITソリューション・ビジネス開発力・養成講座
■ ------------7月11日(月)@仙台

 「ITで日本を元気に!」 このメッセージを東北の地から発信してゆくためにできることは何か。それは、ITビジネスに関わる私たちの営業力やビジネス開発力を高めてゆくことに他なりません。東北地域だけではなく、日本全国に、この地の優れた技術や人材を売り込む力を持つことができれば、その力によって、日本の元気を取り戻し、震災の復興にも寄与するはずです。

 この「緊急研修会」は、そんな趣旨のもと、トライポッドワークスの佐々木社長のご協力をいただき、ITビジネスに関わる皆さんの営業力とビジネス開発力を強化しようと開催されるものです。
 
 参加費は無料です。改めて、facebook等でご案内させていただきます。