2011年11月12日土曜日

相談される営業になるための条件: 3年後の常識に触れる好奇心


「スマホを持っていない方、いらっしゃいますか?」

IT営業を対象とする研修で、こんな質問をしてみました。なんと30人中10人ほどの人が手を上げました。私は、こんな話しをさせていただきました。

「IT営業でありながらスマホも持っていないなんて、とてもはずかしいことだと思いませんか。そうですね、この状態をわかりやすく申し上げれば、銀座の目抜き通をスッポンポンで歩いている・・・そんな状態を想像してください。それほど恥ずかしいことなんですよ(笑)」

今年、PCの世界での出荷台数は3億5千万台程度と予想されていますが、スマートフォンは4億台を越え、タブレットとともにその伸び率はPCを遥かにしのぐ勢いです。

「タブレット販売台数の増加に伴い、タブレットを使用するユーザーの数も当然増加することが予測される。・・・中略・・・2015年までに米国内だけで8210万人がタブレットを使用するとForresterは予測している。」 

PCがスマホやタブレットに全て置き換わるとは思いません。しかし、これだけスマホやタブレットが当たり前になるとすれば、企業システムも無視できなくなるでしょう。それは、その使い勝手の良さにあります。企業に勤める人はひとりの消費者でもあります。かれらは当然のこととしてこのように思うでしょう。

「なぜ、うちの社内システムはこんなに使いにくいんだろう」。

その世論はこれまで以上に高まることは間違えありません。となると、情報システム部門もその声を無視することはできなくなるはずです。

IT営業の仕事は、お客様の3年後に責任を持たなければなりません。私達はお客様のこれからの投資に責任を持ち、3年後のシステムのあるべき姿を提案しなくてはなりません。その責任を担う営業が、3年後の常識に触れること無く、この感性を持ち合わせていないとすればどうでしょう。これは怠慢としかいいようがありません。営業としてのプライドの欠如と言い換えてもいいくらいです。自動車免許も持たず運転もできない自動車会社の営業から車を買おうなんて思わないのと同じ話です。

SNSについては、社員が実名で発信することに未だ懸念を示す声も少なくありません。しかし、米国でインターネットを利用できる人の96%がFacebookのアカウントを持ち利用しています。世界で8億人の会員がいて1日に5億人が利用しているという現実。確かにリスクはありますが、それ以上に大きな可能性があると感じるのは当然のことでしょう。そんなFacebookを多くの企業が重要な顧客接点として、その活用を模索しています。「リスクがあるからビジネスに使うにはちょっと・・・」という気持ちもわかりますが、リスクのないところにイノベーションが生まれるとも思いません。

日本の会員数は未だ500万人程度です。しかし、確実に、そして急速に人口を増やしています。それが直ちにビジネスに結びつくかどうかは別としても、その可能性は無視できないでしょう。実際に使ってみればわかることですが、Facebookはコミュニケーション・ツールとして本当によくできていることがわかります。メールアドレスを探す必要もなくすぐに連絡できますし、関係者に一斉配信することも簡単です。グループを作って情報を共有し、自分の考えを整理することや思わぬ人のつながりからアイデアやビジネスのきっかけをつかむこともできます。ほんとうに便利なんです。

「TwiterやFacebookに発信しても、集客にはつながりませんよ。そこから仕事の話しがくることなんて期待できません。そんなことに時間やお金をかける暇があれば、今つながりのあるお客様に、ひとつひとつ、地道に説明する方が効果的ですよ。」

確かにサービスや商品、やっていることの告知などの情報発信を繰り返すだけでは、集客やビジネス・リレーションの開拓に役立つとは思えません。ただ、それに時間や手間がかかるという感覚にも違和感があります。移動中に、ちょっと息抜きに、そうですね、例えばたばこやコーヒーの感覚で発信する、それに時間や手間がかかるとも思えず、ましてやお金もかかりません。

自分の思ったことや気づいたことをメモに取る感覚で発信する。そこには自分の驚きや悲しみ、なるほどそういうことだったのかという気付き・・・様々な感情の動きや価値観に彩られています。そんな発言を見た人が、自分の感情や価値観と共鳴する・・・そこに人のつながりが生まれます。

そして、その共鳴が水面に水滴を垂らしたように揺らぎながら広がり、また誰かがそれに共鳴してその揺らぎに自分の感情や価値観を織り交ぜてさらにつながりを広げて行きます。しっかりと自分の意見を述べたいときは、時間を掛けて考えます。そして文書を作ります。それをブログにアップしTwitterやFacebookに発信することもあります。

決して集客や売上のために発信しているのではありません。自分の発信に様々な反射があることを期待しているだけなのです。それが気付きになり、思考の整理につながる。また、共感できる人たちの知恵や知識と巡り会うきっかけにもなります。それは、私のように個人で仕事をするものにとっても、また企業に属するものにとっても、何の違いもありません。少なくとも、私にとってはもはや貴重な情報源であり、人のつながりを生み出し、思考を整理するかけがえのない道具になっています。

このような自分のために行う行為が、結果としてビジネスや集客につながることもしばしばです。しかし、それは期待するものではなく、もたらされるものだという感覚が必要だろうと思います。

「すぐには役に立ちません」という言葉には、ITが業務処理の効率化や既存の仕組みの延長であり使い勝手を向上するための仕組みであるという常識が前提になっているのかもしれません。しかし、ITがこれまでも既存の常識を変えてしまうイノベーションの手段であったことにも思いをはせるべきでしょう。そこに思わぬ発見があるかもしれません。思わぬつながりが生まれるかもしれません。そんなわくわく感を私は感じています。

このつながりの可能性をチャートにまとめてみました。いかがでしょう?



この感覚は、使ってみなければわかりません。試行錯誤し、失敗もし、恥をかいたこともあります。集客のために使おうと考えたこともあります。そういう行為は大概が失敗でした(笑)。

そんな試行錯誤がないままに、なるほどそういうことかと感じることができなければ、SNSを活用した集客やビジネスのアイデアもきっかけも生まれてくるはずもありません。当然、ビジネスにつながるかどうかを結論づけることはできないように思います。

営業が持つべき感性は、こんな経験に裏打ちされてこそ迫力があるものです。理論や製品知識も大切です。今を正しく理解することも必要なことでしょう。しかし、お客様の期待はその先にあります。明確な答えを持ち合わせていないにしても、お客様とそのことについて会話もできないようでは、ビジネスのチャンスも生まれません。

ITの未来についてささやかな好奇心を持つことが必要です。そして、ともかく試してみることです。そんな日常の振る舞いもまた、お客様に相談されるひとつの条件であることに、私達は気づくべきかもしれません。



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