2011年2月20日日曜日

貴方の身近にもいるガラパゴス営業たち

 この業界には、2つのタイプのガラパゴス営業が、生息している。
 
 まず、ひとつは、「過去の栄光」という島に生息するガラパゴス営業だ。
 
 このタイプの特徴は、「俺の若い頃はなぁ」、「オフィースにいる暇があったらお客さまを回ってこい」、「とにかくお客さまに食らいつけ」というような、根性論的発言をよくする。年齢は、40歳以降に多く、マネージメントも多い。
 受注するためには、お客さまとの人間関係を大切にし、信頼関係を維持することが、もっとも大切だと考えている。また、自分は、このようなことには長けていてること、また、自分がかつて担当したお客さまについては、誰よりも知っているという自負がある。
 お客さま第一、滅私奉公を信条とし、そのような自分の信条に絶対の自信をもっている。その一方で、それができない部下や若手を「最近の若い連中は・・・」と自分の基準で切り捨て、俺を見習えと言わんばかりに、自分のやり方に従わせようとする。「なぜ、それをする必要があるのですか?」と聞いても、「やれば分かる。とにかく俺の言うとおりにやれば、いいんだ!」と理由や方法を伝えることなく、確固たる信念で、部下に命令することも多い。
 
 このタイプのガラパゴス営業は、過去のある時期、このやり方で成功を収めてきた。その方法が、未だに通用すると信じている。あるいは、今の世の中や若者達の価値観の変化について行けない・・・あるいは、そういうことを学ぼうとしない。自分と違う価値観や今までのやり方でできない事態に遭遇すると、自分の信じている価値観に引きこもり、「とにかく俺の言うとおりにやれば、間違えない!」と部下に命ずる。そして、自分もそのとおり行動し、結局は失敗する。しかし、その反省もそこそこに、また同じことを繰り返す傾向がある。
 
 ここまでではなくても、「後はおまえにまかせる。一生懸命やれば、道は開ける。とにかく、頑張ってこい!」と一見理解のある励ましを与えてくれる。しかし、それ以降は我関せず。結果だけを問い、過程を見ようとはせず、とにかく「頑張れ」、「食らいつけ」、「気合いいれてやってくれ」の精神論を唱えるばかり。決して、方法論について、共に考えようという姿勢を示さない。
 
 彼は、間違いなく成功体験者であり、会社の業績にも大きく貢献した。だから今の地位にある。この栄光は賞賛に値するし、体験に裏打ちされた言葉には、勇気づけられ、感動もする。しかし、申し訳ないが、そのやり方が、未だに通用するという思い込みだけは、やめてもらいたい。
 
 グローバル化や失われた20年での景気の低迷は、それまでのような人間関係に頼る営業スタイルだけでは通用しない価値観を根付かせてしまった。景気がいいときは、仕事も潤沢にあり、お客さまも業者の住み分けを当然と考え、安心し、信頼できる営業に仕事をまかせていれば大丈夫というコンセンサスが成り立っていた。営業は、それに応えることで、確実に業績を伸ばすことができた。
 しかし、長引く景気の低迷は、このような常識を壊してしまったようだ。仕事そのものが減り、供給過多となってしまった結果、競合はもはや常態化し、単金の頭を押さえている。さらにオフショアの台頭は、ますます強い力で頭を押さえつけている。
 
 また、クラウドは、その実態の如何に関わらず、お客さまの大きな関心である。ITに詳しくない経営者でさえも、「クラウドで安くできないのか」と言う始末である。
 
 また、昨今は、コスト削減一辺倒の流れに、ひとつの変化の兆しが現れている。それは、変化や変更への柔軟性である。
 
 「Javaのエンジニアが10人欲しい」と言われれば、どうすればいいかは、容易に想像がつく。しかし、「低コストで運用でき、変化に柔軟なシステムが欲しい」と言われても、どう答えていいのか迷ってしまう。
 営業ひとりの能力で解決できるわけではなく、組織をあげて、お客さまの期待に応えてゆかなくてはならない。当然、営業の役割も変わってくることになるだろう。つまり、お客さまの課題を整理し、戦略を立て、大きな設計図を描き、人や組織の組み合わせを考えなくてはならない。そんなプロデューサーとしての営業が、求められている。もはや、一匹狼の職人営業では、仕事にならない。
 
 確かに、技術や社会環境が変わっても、人間の精神や「こころ意気」といったところには、時代を超えた「不易」があることは間違えないと思う。また、人間関係の大切さも、変わることはない。しかし、それだけでは、不十分であり、その方法論や価値観には、「流行」があることもまた真実であろう。その切り分けができないままに、「過去の栄光」という島に閉じこもっているガラパゴス営業は、少なからずいるようだ。

 かれらは、世の中の変化には、気付いている。しかし、それがどんなもので、どのようについてゆけばいいのか、その方法が分からない。だから、島の外へ飛び出すことを怖がっている。自分の生きてきた、信じてきた営業のあるべき姿を否定されることを恐れている。自分が今の自分であることの証明を失うことを恐れている。
 
 「過去の栄光」は、すばらしい勲章であると思う。また、成功や失敗の体験から得た人間としての処し方は、時代を超えて変わらないものであろう。お客さまの成功や自分の成長を喜ぶという価値観は、今の世代とも共有できるものだ。それまでも意味がないと思う必要はない。過去と大きく変わってしまったのは、方法論であり、意志決定のメカニズムである。
 
 現場の感性を信じ、自分のやり方に固執することなく、チャンスを与え続ける。時代の変化を分析的に捉え、ものごとの道理を踏まえ、彼らの話に耳を傾け共に考える。そういう役割は、このようなベテランでしか果たすことはできない。その自信を持って、島を飛び出してみてはどうだろうか。
 
 さて、もうひとつのガラパゴス営業は、比較的若い世代に多いようだ。彼らは、「自分」という島に生息し、それ以外に世界があることに関心を持たない。
 
 お客さまへ伺っても、まずは、自分の会社や製品が、如何にすばらしいか、このやり方以外に解決する方法はないと弁舌さわやかにたたみかける。そして、そんな自分の言葉に酔いしれている。
 自分たちの製品やサービスが、世の中の常識のなかで、どう位置づけられているのか、競合他社との比較において、どこに優れ、どこが劣っているかを見ようとはしない。
 自分の成績には、とても神経を使うが、お客さまには、ほとんど感心が無い。お客さまのことを知ろうとはせず、自分の論理や正論を伝えることが、自分の責務であると考えている。
 
 このようなガラパゴス営業は、自社の製品知識やその使い方には熟知している。このようなことに話題が及ぶと、直ちに語ることができる。しかし、他社と比べてどうなのか、うちの仕事にどのような役に立つのかと問われると、貝になるか、他社製品の批判やあるべき論、正論を語り出し、貴方の考えは間違っているとでも言わんばかりに講釈を始める。御説ごもっともではあるが、教養番組であり、パンフレットを読んだ方が早いと思うことも多い。
 
 このような「自分」という島に生息し、外の世界に興味を示さない、あるいは、勉強不足のガラパゴス営業には、辟易とする。そうならないためには、どうすればいいのだろうか。これについては、是非先週のブログをご覧いただきたい。

 改めて、自分に問い返せば、反省も多い。ガラパゴスな自分を外から眺められる謙虚さだけは、持ち合わせていたいと思う。


 人は教えると学ばない、やれと言われるとやりたくないものです。だから教えられる研修は苦痛に違いないと思います。

 だから、偉そうなことを「教える」のではなく、営業という仕事を因数分解し、手順として時系列に改めて組み上げて、自分のスタイルと比べてみるというのはどうでしょう。そして、ひつひとつのプロセスについての実務実践の勘所を整理する。

そんな研修を3/3(木)と3/4(水)に都内で行ないます。有償ではありますが、かなりリーゾナブルだと思いますよ(笑)。

3/4(木)は、部下を持つリーダーやマネージメントのための追加講義で、3/3-4と続け出ていただけるとお安くなります。よろしければ、ご検討ください。

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