2010年8月7日土曜日

共通の言語を持たないマネージャーと部下の不幸

 営業マネージャーと部下との関係で不幸なのは、仕事について語る共通の言語を持たないことである。 

 部下は、マネージャーに何とかわかってもらおうと、背景や経緯とともに、案件の進捗や課題を説明しようとする。それを聞いたマネージャーは、そのまどろっこしい説明に業を煮やし、「要はなんなんだ。もっとわかりやすく説明しろ!」と声を荒げる。

 その声に語る言葉を失った部下は、どうしたものかと途方に暮れつつも、表現を変え、視点を変えて、なんとか必死にわかってもらおうと努めるが、「だから何なんだ。つまりだな、こういうことなんだろ。」とマネージャーの一方的な要約と解説に、本心や事実に反していても、「そういうことです。」とそれ以上の言葉を失ってしまい、この説明に終止符を打つことで決着をつけてしまう。 

 マネージャーは、部下の無能力を嘆き、部下は、マネージャーのものわかりの悪さに落胆する。なぜこんなことになってしまうのだろうか。 

 営業マネージャーは、プレーヤーとして優秀だからマネージャーとなった。彼は、営業としての成功体験を持ち、どうすれば、売れるのか知っている。自分なりのあるべき姿を持っている。彼は、そのあるべき姿に照らし合わせて、部下の話を聞こうとするのだが、それは未熟であり、その要領の悪さが、納得いかない。

 また、彼は、自分の営業スタイルや手法を持っている。しかし、それを相手に伝える術を知らない。つまり、自分がなぜ成功したのかを分析し、それを相手にわかるように整理できていないのである。勢い、精神論や根性論となり、「なんでそんなこともわからないんだ!」といった説教になってしまう。 

 わからないから部下であり、分かっているからマネージャーとなっている。その当たり前の現実が、見えていないようだ。 

 彼らは、ともに表向きは、日本語を使ってはいるのだが、仕事のことになると、どうもお互いに異国の言葉で語り合っているかのようなものである。 

 仕事を組織として効率よくすすめ、部下を育てることは、マネージメントのミッションである。ならば、自分の成功体験を分析的にとらえ、どうすればわかりやすく相手に伝えられるかを考えておくことは、基本的な仕事であろう。

 部下の話を聞くときに、整理した仕事の手順を示しながら、今どこまでできているのか、次に何をするのかを、分析的に整理し、部下の発言を誘導する。部下も、会話にフレームワークが与えられれば、話もしやすく、要点も絞り込んで、発言できるだろう。

 しかし、その手間を惜しみ、「なんでわからないんだ」と自分の考えを一方的に押し付ける。そして、「しょうがない、俺が行く」と自らお客様の現場へ行くことを宣言する。それはそうだろう。そっちのほうが楽である。自分は優秀なプレーヤーであるから、慣れない仕事をするよりも、要領は心得ている。しかし、それでは部下も育たなければ、組織力も活かせない。 

 営業力の強化の必要に異を唱える人は少ないだろう。しかし、その対策として、マネージメントと部下の言葉の断絶解消に関心を持つ向きは少ないように感じている。そんな取り組みをないがしろに、プレゼンテーションやコミュニケーションのスキル、あるいは、製品や技術についての知識を増すための研修に時間を割いている。しかし、それだけでは、決して営業力の強化にならないことに気付いている人は少なくはないだろう。 

 私は、営業力強化の大切な要素として、営業という仕事を見える化することであると考えている。営業活動のあるべき姿を分析し、プロセスに分解する。そして、体系的に整理する。そうすれば、自分や部下の仕事を客観的にとらえることができるようになるはずだ。

 営業という仕事の手順が見える化されれば、今何をしているのか、どこでつまづいているのか、次に何をすればいいのかをマネージメントも部下も共通の基準で、会話することができる。また、部下も自分のしている仕事の意味を理解することができ、仕事への意欲を見出すことができるようになる。

 営業活動プロセスとは、マネージャーと部下が仕事について語り合う、共通の言語だ。これを持つことが、部下とのコミュニケーションの断絶を解消し、組織力としての営業力を高めてゆく基盤になるのではないだろうか。

 
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