2012年10月27日土曜日

「あいつは頭が悪い」と言う前に・・・

「あいつ、頭が悪いんですよ。こっちがちゃんと話しているのに、全然分かっちゃいない。困ったもんです。」

困っているのは、相手の方ではないでしょうか?伝わらないのは、相手のせいではありません。こちらの伝え方が悪いだけのことです。

「言った」、「言わない」の議論になることがあります。「あのとき言ったよね」、「そんな話聞いちゃいないよ」。たぶんどちらも本人にとっては真実なのでしょう。

 お互いが100%わかり合えることは不可能です。コミュニケーションとは、これを前提に考えなくてはなりません。

コミュニケーションは、「聞く」「尋ねる」「伝える」3つの要素の組み合わせです。



「聞く」とは、相手の伝えようとしていることに傾注し、その言葉によって、何を伝えようとしているのか、自分にどのような行動や気持ちの変化を起こさせようとしているのか、その意図や目的を知ろうとする行為です。けっして、相手の発する単語を記憶する行為ではありません。

そして、相手の意図や目的について、自分なりに解釈し、それを自分の言葉に置き換えてみることです。そして、その解釈が正しいかどうかを相手に「尋ねる」ことで、正しいのか、間違っているのか、修正すべき点はどこにあるのかを確認します。その繰り返しによって、相手の伝えようとする目的や意図に近づくことができます。

しかし、どれだけ相手の意図や目的に近づくことができても、100%ではありません。そのギャップを思い切って飛び越えなくてはなりません。それが、「共感」です。

「共感」とは、相手の「痛い」経験を自分の中に再現し、自分も「痛い」と感じることです。相手の悲しみを自分の中で再現し、涙を流すことです。「共感」とは、言葉だけでは伝わらない相手の意図や目的を想像力で乗り越える行為と言えるかもしれません。

「尋ねる」るとは、自分の解釈を相手に確認する行為です。つまり、自分の仮説を示し、相手の回答によって検証する行為です。

「きっとこういうことだろう」、「こういうことに興味があるはずだ」、「こういうことに困っているに違いない」など、自分なりの仮説を組み立て、「私はこのように考えて見たのですが、それで正しいのでしょうか」と尋ねる行為です。

「何かありませんか」、「何でもいいから教えてください」、「何か言ってください」では、尋ねたことにはなりません。

「伝える」とは、相手に情報を伝達する行為です。ここでいう情報とは、感情、意思、思考、知識などです。そして、このような情報を伝達することで、相手の共感を引き出し、さらには相手が行動を起こすように相手の意識を制御することまで考えなくてはなりません。

そのためには、相手の興味や趣味、関心事、立場や状況などを知り、相手が理解し、行動しやすい条件はなにか、相手にとって理解しやすい単語や表現とは何かを想像しなくてはなりません。

そして、自ら描いたシナリオで、相手に言葉を放ってみる。そして、その反応を受けてシナリオを修正し、また再び言葉を伝える。そんな行為の繰り返しによって、情報を伝え、共感や行動を引き出す行為が、「伝える」ことなのです。

自分の「聞く」、「尋ねる」、「伝える」の3つの行為に、相手も対応する。この相互の行為が、コミュニケーション活動です。

コミュニケーションとは、そんなお互いの行為の結果であり、一方の行為だけでは成り立ちません。

しかし、現実には、お互いがこのようなコミュニケーションの構造を理解し、適切に行動することなど、なかなかありません。

だからこそ、私達は「聞く」、「尋ねる」、「伝える」の3つの行為を意識し、相手をこの行為に巻き込むことが大切なのです。

こちらの伝えたいことだけを伝え、満足をしてしまっては、それは伝わったことにはなりません。相手の共感や行動の変化を確認し、はじめて伝わったと言えるのです。

「伝えた」という自分の満足ではなく、「伝わった」という相手の真実が大切である。

以前ブログで書いた言葉です。コミュニケーションの本質は、ここにあります。

改めて自分を振り返れば、時に自分の言葉に酔いしれ、話したことに満足し、相手の共感や行動の変化に関心も払っていないことがよくあります。改めて、コミュニケーションとは何かに思いをはせ、自戒を促したいとここに書かせて頂きました。

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2012年10月21日日曜日

何ができるかではなく、何をすべきかを考える

「皆さんの会社の複合機と競合会社の複合機では何が違うのでしょう。どこが競合優位なところなのでしょうか。」

オフィス製品をとりあつかう大手メーカーの営業研修で、こんな質問をしてみました。しかし、その違いを明確に説明できる人はいませんでした。

同じ質問をその競合会社の営業研修で行ってみました。しかし、ここでも営業の皆さんの答えは同じでした。

今年に入り、西東京地区でふたつの新しいデータセンターがオープンしました。どちらにもおじゃまして話をうがいましたが、セキュリティ面、災害強度、エネルギー効率など、「次世代型データセンター」と自称されるだけあって、すばらしい設備です。しかし、この両データセンターの違いはどこにあるのでしょうか。営業であれば、その違いを明確に説明できなければ、売り込むことはできないはずです。

複合機の場合も、次世代型データセンターの場合も、機能・性能は頂点に達し、その違いを説明することが困難なほどに、ともに高い完成度です。

もうこうなると、機能・性能の比較で競合することはできず、あとは価格競争しかありません。「コモディティ化」とは、まさにこのような状況を指す言葉です。

企業は切磋琢磨して高い完成度を目指します。しかし、それが行き着くところまで行き着いた先には、コモディティ化が待ち構えています。

モノで差別化が図れないのであれば、サービスで差別化を図るしかありません。ITビジネスの多くは、今この命題を抱えています。

モノがまだまだ過渡期にあるときは、モノの機能・性能が、価値を評価する基準となっていました。サービスはモノに付帯するおまけでしかなく、競合優位を左右するものでありません。モノが顧客価値を支配している段階です。

ところが、モノの性能や機能では差別化できない段階になると、差別化の基準はサービスに移行します。つまり、サービスが顧客価値を支配することになります。つまり、サービスに差別化可能な価値を作り込まなければ、競合優位を見出すことはできないことになります。

だからといってモノの機能・性能という価値が重要性を失うわけではありません。それは「前提」として不可欠な存在であり続けます。ですから、モノを提供するための高い技術力の必要性がなくなるわけではないのです。しかし、それ自身が、差別化の要件にはなりえないのです。

そうなると、モノとサービスを一体として、顧客価値の創造と差別化を図ってゆくことが必要となります。しかし、「モノを前提としたサービス」であっては、モノが顧客価値を支配することに変わりはなく、できる範囲も限定されることとなります。

モノを前提とせず、どのようなサービスがお客様の価値を創造できるのかを追求する。そして、どのようなサービスが、差別化を創造し、競合優位を確立し、収益につながるかをまず考え、その上で必要なモノを考える。そういう発想が必要となります。「サービスが顧客価値を支配する」とは、このような発想に立つことなのでしょう。

Appleが、iPhone/iPadとともに展開しているiTunesやApp storeは、サービス支配型ビジネスの典型と言えるケースです。

どこの会社もAppleと同じことができる訳ではありません。しかし、この視点は、これからのITビジネスを考える上で、不可欠な発想です。そして、Appleでなくてもできることはいろいろとあるはずです。

「お客様の課題は何か、何を必要としているのか、どすれば、そんなお客様の課題を解決し、ニーズを満たすことができるのか」。

何ができるかではなく、何をすべきか」を考えることです。そして、それに必要なモノやサービス・プロダクトの組み合わせを考えます。

全てが自社の商材でまかなえるとは限りません。しかし、「何をすべきか」の視点に立てば、それは致し方のないことです。

複合機やデータセンターのようなコモディティ化の現実に対処し、競合優位を見出すためには、「サービス支配」の視点に立って、ビジネスを捉えることが必要です。

お客様が必要としていることは、モノを手に入れることではなく課題を解決することです。あるいは、ニーズを満たすことです。そうであるとすれば、どんなサービスが魅力的であるのかと考えます。そして、それが十分に魅力的であるとすれば、その実現に必要な複合機やデータセンターは、それ自身が一定水準の機能や性能を備えているとすれば、結果として採用していただけるはずです。

クラウドのIaaSもそろそろそんな段階にさしかかったようです。

以前にもご紹介したIaaSの稼働状況をベンチマークしているサイトがあります。これを見ると、名だたるクラウド・サービス・プロバイダーは、いずれもエンタープライズ・ニーズを十分に満たす高いサービス・レベルであることが分かります。

IaaSもまたコモディティ化の段階に達していると言えるでしょう。その前提に立てば、IaaSを事業としている企業は、お客様の課題を解決するためのサービスは何かをまず考え、その基盤としてのIaaSという「サービス支配の戦略」で、競合優位を見出す必要があります。

あるいは、AmazonやGoogleのように、コモディティとしてのIaaS基盤を徹底的に追求し、コストパフォーマンスやサービスの安定性、自動化や自律化といった基盤としての顧客価値を追求すべきかもしれません。

後者は相当の体力を必要とします。それが、容易ではないとすれば、サービス支配の視点に立ち、競合優位を見出すしかありません。

先行逃げ切りでモノの付加価値を追求するビジネスを展開するか、それともコモディティを基盤としてサービス支配のビジネスを展開するか。いずれにしても、その位置づけを明確にしなければ、競合優位を確立することはできません。

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2012年10月14日日曜日

ITのトレンドを知るための3つの習慣

 「どうやってITについての知識を学べばいいのでしょうか。なにかいい本はありませんか?

  ITトレンドについて講義をすると必ずこんな質問を受けます。正直なところ、この手の質問には、「これが正解」と申し上げられるものがありません。人それぞれに状況も違えば、好き嫌いもあるでしょう。そうはいっても質問を受けた以上は、回答しなければ講師としての面子もありますので() ・・・ということで、私なりの勉強術について紹介させていただきます。

1.朝のゴールデンタイム
 社会人にもなれば残業など当たり前ですし、夜の付き合いも仕事のうちです。また、趣味や家族のためにも時間を使わなくてはなりません。当然、昼間は仕事に忙殺される毎日ですから、勉強する暇などありません。そうなると残された時間は朝しかないのです。 
 私の場合は、歳のせいか最近は毎朝5時前に起床しオフィスには6時過ぎに着くようにしています。これは最近はじめたわけではなく、新入社員の頃からできるだけ早くオフィスに出て自分の仕事を片付けるようにしていました。 
 当時の私の上司は、平気で夜の十時にミーティングを招集するような人でした。そのミーティング終わって「明日の朝、お客さんに持って行くから、それまでに資料、作っといて!」など、普通でした。また、仕事仲間とのカラオケやお客様との会食もあります。必然的に夜の時間はありません。そうなると、仕事を片付けるためには朝しか時間がありません。朝早くオフィスに出て行く習慣は、そんなやむにやまれぬ事情があったからです。 
 しかし、今改めて考えてみると、これは私にとって大変価値ある習慣になりました。だれもいないオフィスでお客様からの電話もありません。当時は、電子メールもなかったので、自分の時間に没頭できました。 
 新聞や雑誌を読む、営業資料や製品のマニュアルに目を通す、資料をまとめる、前日の仕事のレポートをまとめるなど、自分でコントロールできる時間がありました。こき使われる身でしたから「自分でコントロールできる」は貴重な時間でした。これもまた、そんな時間を作ろうという意欲の源泉であったと思います。 
 サラリーマンをやめてもこの習慣は変わることはありませんでした。なんといっても、仕事がはかどるという、一度手にした快感は捨てがたいものがありました。また、貧乏性なので、目が覚めたのに何もしていない時間がもったいないと思ってしまい、結局は三十年近く続けています。 
 朝に自分のためのゴールデンタイムを持ってくるという習慣。仮に1時間いつもより早く目覚め、この時間を持てば、10年間で1.5年間分(18時間換算)自分のためだけに時間を費やしたことになります。考えて見れば、これは凄い時間です。 
 勉強のために時間を作るという努力。まずは、その決心が必要ですが、その決心があるなら、朝しかありません。コーヒーの一杯でも飲みながら冴えた頭で脳みその体操を行う。脳みそは、一生付き合う相棒ですから、まあそれぐらいのことをしてやってもいいのではありませんか。
2. ソーシャル・ウオーキング
 これは最近の習慣ですが、TwitterFacebookという大変優秀な教師のお世話になっています。 
 「キュレーター」。もともとは、博物館や図書館で収集資料の研究に携わり、専門知識をもって展示の企画や収集物の管理業務にあたる人をさす言葉です。日本語の学芸員に相当する人です。 
 実は、ネットの世界にも数多くのキュレーターが活躍しています。電子出版、クラウド、ネットワークなどのITの世界に留まらず、美術や生活、雑学も含め、様々な分野で、自分の趣味や価値観を基準に情報を収集し、それをブログにまとめること、TwitterFacebookで紹介している人が少なくありません。 
 これぞという人に出会うと「フォロー」や「購読」をするわけです。そうすると、彼等は私の教師となり、自分が探さなくても、自分の専門分野で毎日貴重な情報のありかを教えてくれます。 
 「偏りがあるんじゃありませんか?」、そんな質問を受けることがあります。全くその通りで、実に偏りがあります。だからこそ、そこには自分には気付かない視点があり、新しい気付きをあたえてくれるのです。 
 また、「同じような話ばかりでは?」、そんな疑問もあるかもしれませんが、多くの人が話題にしているということは、それだけ社会的関心が高いと言うことになります。また、その人なりの解釈や意見も付記されていて、自分の狭量に気付かせてくれることもしばしばです。 
 キュレーターが紹介してくれている情報を、散歩するように見てゆきます。そして、これぞと思う書き込みがあれば、そのリンク先をクリックしさらにその情報について、深く読み込むことにしています。 
 「TwitterFacebookなんかしている暇ありませんよ」、そんなご意見もあるでしょう。確かに私も「遊びすぎ」です。しかし、得られる情報の多さと幅の広さは、自分ひとりでできる量を遥かに超えています。おかけで、情報収集の能力が飛躍的に拡大できた思っています。  
 だらだらと散歩をするというよりも、覚悟を決めて楽しい遠足に行く、そんな感じでしょうか。個人的には、「逍遙」と洒落てみたいですね。
 3. アウトプット思考
 「他の人に説明するためには、どうすればわかりやすいだろうか」と考えながら、情報を読みます。気付いたことをFacebookで説明してみます。説明しようとすると、分かっていないなぁ、とがっかりします。また、Evernoteにそのリンク情報と共に、説明するときのセリフを書き込んでゆきます。 
 「わかりやすく伝えるには、どうすればいいだろうか」。そんなことを考えながら、ひとつのテーマでいろいろな資料を読み込んでゆくと、次第に枝葉と幹が見えてきます。そして、それを最後に自分の説明資料として書き出しています。 
 ただ読むだけではなく、「だれかに説明するために読む」。説明するとなると、うかつなことは言えませんから、物事の本質を見極めようという態度になります。また、何よりも、人が関心を持ち、話題になりそうなテーマは何かを探すようにもなります。そんなことが、トレンドを追いかける眼を養ってくれているのかもしれません。 
 「伝えるために学び考える」が、「アウトプット思考」です。時々、思いついたようにポストしている「コレ一枚シリーズ」は、そんな私の逍遙のスナップ写真のようなものです。

 「知識の逍遙」、ちょっとかっこよく申し上げればそういうことかもしれません。何かに合格するための勉強ではありません。何かの役に立つから学ぶわけではありません。学ぶと言うことを遠足のように楽しむ感覚とでも申し上げておきましょう。

 ITの知識に限らず新しい知識に触れられる時間は、本当に楽しいものです。朝の1時間、ソーシャルを散歩し、スナップ写真を残す。勉強法と言えるかどうかは分かりませんが、私はそんな楽しみ方をしています。

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2012年10月6日土曜日

営業の感性・貴方は感性の高い行動をしていますか?


 感性とは、本来、美や善などの印象を知覚する能力です。これは非言語的、無意識的、直感的なもので、例えば何らかの音楽に「素敵」と感じることや「自分は好きじゃない」と違和感を覚える感覚を引き起こす能力です。

 営業における感性とは、「また会いたい」、「話したい」、「相談したい」と相手に思わせる能力です。そのためには、「できる」、「頼れる」、「よく知っている」といった理性面で、能力の高さを相手に感じさせることができること、そして、「いいひと」、「話しやすい」、「気持ちがいい」といった、感性面で人として好意を感じさせることができることです。

 このような能力は、営業活動を円滑に進めるために必要なもので、特に新規顧客へのアプローチにおいては、この「営業としての感性」が、決定的な影響を及ぼすこともあります。

 この感性を哲学的に議論しても、行動として表現できなければ、何の役にも立ちません。そこで、「感性の高い営業の行動は何か?」という視点でチェックリストをまとめてみました。これを使って、営業として感性の高い行動ができているかどうかを振り返ることができます。



お客様について理解できている
 公式に公開されている情報ばかりでなく、第三者からの情報や評価、対立した意見、競合他社や業界に関わる情報、裏話など、公開、非公開を問わず広くお客様について精通していることが必要です。

 情報の感度が高ければ、案件獲得のチャンスを広げることができます。また、お客様への説明や説得に自信を与え、幅広い情報に裏付けされた話は、お客様の信頼感を高めることになります。

 営業活動は、すべからく情報を手に入れることから始まると言っても過言ではありません。求められる情報は、広範にわたりますが、次のように3つに区分して考えて見ましょう。

お客様の会社について理解するために必要な情報
ニュースやプレスリリース、社内報やIR情報(財務諸表等)などの公開情報、個人的に親しくなったお客様から「今、販売システムの顧客情報管理のセキュリティに問題があってね」、「こんど、宮城の工場に新しいラインを新設するに当たり工程管理をどうするか検討しているんだ」といった未決定、未公表の情報です。
意志決定に関わるキーパーソンの個人情報
案件の意志決定は、会社としての重要性によって判断されますが、その評価を行うのは個人であり、特に意志決定に大きな影響力を行使できるキーパーソンの個人的意志が判断を左右します。
その方の関心事や価値観、意志決定の基準となるもの、社内における評価、人間関係など、多面的に個人の人となりを知り、自分たちに有利な意志決定を引き出すための情報提供や提案活動を行う必要があります。
世の中の社会常識
直接案件に関係がなくても、お客様との日常的会話に話題を提供することも必要です。特に相手が経営者となれば、社会や経済、経営に及ぶ広範な知識が貴方への信頼感を高めます。
これらは、一夜漬けで手に入れられるものではなく、習慣として、新聞や雑誌、Webなどの様々な情報ソースに触れ、日頃から積み重ねておくことしかありません。そういう習慣を身につけることも、営業としての感性を磨く上では大切なことです。
お客様が話をしやすい雰囲気を作ることができる

 こちらにとって関心があるかどうかにかかわらず、相手にとって関心のある話題を提供することができなくてはなりません。また、話の内容への同意、確認など、お客様の思考の整理や発言を促すことで、お客様が気持ちよく話ができる環境を演出することも大切です。

関心のある話題を提供する
案件に関わらず、相手が関心を持っている話題は何かを提供します。公開されていない情報、例えば自社の内部事情やお客様の他部門の情報などは、関心の高いもののひとつです。ただし、機密やプライベートな話題に触れることは、逆に「どこでもそんなことをはなしているのか」と、不信につながることになります。注意が必要です。
また、ITのトレンドやビジネスの動向について新たな視点を提供することや、同じ話題でも、わかりやすい整理した情報を提供することで、喜んで頂くことはできます。
お客様が欲していることで、かつ新規性の高い情報とは何か、言い換えれば、「びっくり」、「凄い」を感じさせる情報を常に用意しておくことを心がけましょう。
思考の整理や発言を促す
会話の相手が、こちらの尋ねたいことについて、理路整然と整理できているとは限りません。むしろ、そのようなケースの方がまれなことです。
相手の話を聞きながら、相手の思考を整理することは、こちらが必要な情報を手に入れるために大切なことです。その一方で、それは話をする相手にとっても、自分の考えを整理する手助けとなり、ありがたいものです。
相手の話をただ聞き取ってメモするだけではなく、曖昧なところの確認、視点を広げて位置づけを明確にする、など、こちらから積極的に働きかけながら、会話をすすめるべきです。会話内容を整理するために以下の方法は効果的です。
  • 「このように理解いたしましたがいかがでしょうか?」など、自分の解釈を相手に確認する。
  • 「なぜ必要なんですか?」「なぜこの期間なんですか?」など、「なぜ」の問いかけで目的や理由を確認する。
  • 「こういう場合は、どうなんでしょうか?」など、想定される可能性を広げ、状況把握をする。
  • ディスカッション・ノートを事前に用意する、あるいは、会話をはじめる前に議題や目次をホワイト・ボードに書き出し、会話のストーリーをあらかじめ示しておく。
  • 会話の内容をノートやホワイト・ボードに視覚的に整理し、これを確認をしながら会話する。
また、相手を話しやすい気持ちにさせるには、以下の方法が効果的です。
  • 他社の事例、第三者の意見などを引き合いに出し、こちらの一方的な考えではないことを示しながら、相手の抵抗感をなくす配慮をする。
  • 自分の意見に対立する意見も自ら提示し、両者のメリット、デメリットを示しながら、自分の意見の正当性を相対的に示し、相手に納得を促す。
  • 「何かありませんか」ではなく「これについてはどうですか」と質問し、相手の確認を引き出しながら課題やニーズの確認を行う。
  • お客様の発言を遮らず、相手の話を呑み込むように一呼吸置いて、自分の発言をする。
会話がうまくいくかどうかは、相手の意識や気持ちの変化をリアルタイム把握し、適切に対処することです。自分の発言は、相手にどんな気持ちの変化を起こさせているのか、相手は今何を伝えたいのか、何を話さないようにしているのか・・・そのような想像を常に働かせながら、会話をすることが大切です。自分の言葉に酔いしれ、自分の気持ちに埋没しないことです。そして、「自分がそうされたらどうだろう」という目線を忘れないようにしたいものです。

相手の意志や結論を確認する
リップサービスという言葉があります。会話の雰囲気を壊さないように、相手の歓心を誘うような言葉を使うことがあります。また、曖昧なままで会話を終わらせようとすることもあります。
相手が、重要な要件について、このような態度を取ることがあり。しかし、そのままにしておくと、意識のすれ違いが拡大し、後々の混乱やトラブルになりかねません。
金額のこと、競合他社のことなどは、聞きにくいという意識が働きがちです。しかし、基本的には、言葉を濁さず、率直に聞くことです。相手も仕事です。遠回しな会話は時間の無駄という意識があります。礼儀を忘れず、丁寧に質問すれば、相手もそれに答えてくれます。それで応えてくれないとすれば、なにかそうしたくない理由があるはずです。むしろ、そちらを探るような会話をすべきです。また、その相手から情報が得られないときは、別の方と話をすべきかもしれません。
具体的には、次のような話し方が効果的です。
  • 「この内容で提案をさせていだきますがよろしいでしょうか」というように、こちらの考えを提示し、相手の反応を確認している。ただし、方針、重点、構成、金額、体制などの内容を具体的に提示する。
  • 予算の上限、受け入れ可能な金額のレンジを直接数字で示して確認する。
  • 「私ども以外にどちらが提案されているのでしょうか」「他社さんの提案内容はどのようなところに魅力を感じ、弱点があるとお考えですか」など、競合他社について率直に聞く。
  • 「私どもにご発注頂くためには何ができればいいでしょうか」など、採用の条件を聞き出す。このような会話により、こちらへの期待、あるいは、既に他社に決めているかどうかを確認することができる。
立場を離れて会話できる時間を作る
部下や上司など、本人以外の第三者がいる場所では、話せないことがあります。また、立場上本心を語れず、話を曖昧にしてしまうこともあります。また、その逆に、強気の発言で、自分の存在をアピールしようとすることもあります。
会話とは、そのような場の力関係において、大きな影響を受けるものです。従って、場が変われば、異なった会話が交わされることになります。
是非とも手に入れたい情報は、公の場で交わされる公開情報ではなく、まだ未決定であり、重要性の高い非公開情報です。このような情報を手に入れるためには、相手と2人で会話する時間を作ること、あるいは、非公式な会話ができる、あるいは交わされている場所に自ら赴き、情報を手に入れる努力も怠るべきではありません。
具体的には、以下のような行動が効果的です。
  • 必要に応じて、二人で会話する時間を作り、大勢の前では聞けないこと、話せないことを会話する。
  • 会食にお誘いする。ただし、頻度は控えめにすること。頻度が高いと不信感をいだかせる。
  • たばこ部屋や昼食に同行する。
  • 自分たちが出展しているか否かにかかわらず展示会やセミナーに同行する。

お客様から安心・信頼される状況を作ることができる

 会社の看板を外し、個人としてお客様に好感や安心感、知性や誠実さを印象づけることも大切です。それができれば、相手は、安心して仕事を任すことができる存在として、貴方を受け入れ手くれるはずです。

相手に好感を与える
持ち物や服装、誠実な応対などは、相手に良い印象を与えることができます。これは個性にも関わることであり、絶対的な基準を示すことはできませんが、おおよそ、以下の点は抑えておきたいところです。
  • 文房具に安物を使はない。
  • 服装のセンスや清潔さに気を遣っている。
  • メモを取り、お客様の話しを真剣に聞いている姿勢を示している。
  • お客様の話に相槌を打ち、真剣に聞いている姿勢を示している。
  • 笑顔で応対する。
関心を示していることを伝える
人は、他人が自分にどう関わってくれるかにより、自分を評価し、自分の位置づけを確認しています。そして、それが自分への敬意や信頼を感じさせるものであれば、相手にも同様の感覚を持つ傾向があります。
それは、決して大仰なことではなく、日常のさりげない行動です。本来ならば、日常の習慣として意識せずにできるようになることです。しかし、それができていないとすれば、まずは意識して行動しなければなりません。
具体的には、以下のような行動です。
  • 訪問の後は確認や御礼のメールを送る。
  • 仕事や個人的なことでのお祝い事、賞賛すべき出来事などに、電話やメールで賛辞を伝える。
  • お客様に関心のありそうなニュースや話題を見つけたらその情報をメールや会話の席で話題として提供する。
ほかにもいろいろあるでしょう。大切なことは、相手が何に関心があるか、何をしてもらいたいか、何を心地いいと感じるのかについて、想像力を働かせることです。

 「感性」とは、教科書で学ぶだけでは身につけることはできません。自ら行動し、体験的に感じ、それを繰り返すことでしかありません。

 営業の仕事は、このような感性を土台として、プロセスを積み上げてゆくことかもしれません。しっかりとした土台の上に、丁寧に建物を築き上げてゆく。営業の成果は、この両者の完成度を高めてゆくことで、結果としてもたらされるものと、心得ておくべきでしょう。

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